しかし、1月に台湾政府が行ったアンケート調査では、国民の80%が自治を希望すると回答した。台湾の行政院大陸委員会によると、数多くの台湾のスタートアップが中国政府からインセンティブを受け、中国で事業を展開しているが、成功しているのは1%に過ぎないという。
「彼らの多くは中国固有の問題に直面している。我々は、彼らに中国でビジネスを行うリスクを伝えている」と同委員会の広報担当であるChiu Chui-chengは話す。
中国で海外のスタートアップが失敗する最大の理由は、現地のビジネス環境に対する理解が不足していることだ。台北に本拠を置くBacker-FounderのCEOであるLin Ta-hanによると、台湾の起業家は、他国の起業家に比べて中国展開を図る上で有利だという。その理由は、彼らは北京語を話すことができ、中国文化を理解しているからだ。
中国政府は、台湾の起業家に対して税の優遇措置を提供している。また、事務所や子会社を設立するための承認プロセスを迅速化するなどのインセンティブを提供するケースもある。
ジャパンタイムズによると、上海郊外にあるスタートアップインキュベーターは、無料オフィスや賃料補助を提供しており、最大で現金3万1000ドルを受給できるという。中国全土には、このような施設が50カ所ほどある。中国政府は、昨年2月にも台湾の投資家や労働者を中国に誘致するため、31のインセンティブを発表している。これに対抗し、台湾政府は自国のビジネスマンを台湾にとどめるためのインセンティブを発表した。
台湾人が起業した会社が中国で成功した事例の1つが、MITメディアラボ出身のEdward Shenが設立した「StorySense Computing」だ。この会社は、電話番号検索アプリ「WhatsTheNumber」を運営している。Shenは、2015年に北京の企業に同社を売却した。
「中国で成功するには、インセンティブだけでは不十分だ」とヤフー台湾出身のSteven Hoは話す。Hoは、2012年に中国本土に移り、ブランドの中国進出を支援する企業を設立した。51歳のHoは、「中国には、中国だけのインターネットが存在することを理解する必要がある」と指摘する。
台湾の行政院大陸委員会は、中国に渡ることを検討している起業家に対して、現地は競争が厳しく、法律や習慣、社会規範の違いに適応できない可能性もあると警鐘を鳴らす。とりわけ違いが大きいのが金融システムだ。中国で決済サービスを利用する場合、アリペイやWeChatと提携する必要がある。
「これらの決済サービスは、海外に比べて販売するサービスやモノの基準が厳しい」と在上海米国商工会議所でIT委員会で会長を務めたDanny Levinsonは話した。