「幸せに働く」ヒントになる3冊|クリエイターの本棚

『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』(PHP研究所)


前野氏は、「幸せ」には2種類あると言う。古代ギリシャで、1つは「ヘドニア」と言われ、もう1つが「ユーダイモニア」と言われていた。前者は刹那的な浅い幸せであり、英語ではhappinessに相当する。後者は持続的な深い幸せであり、英語ではwell-beingに相当する。

そして、長続きする幸せは「地位財」では得られず、心・安全・健康などの「非地位財」によって得られると、前野氏は続ける。この考えに立脚すると、カイシャからお金や肩書きなどの地位財を与えられれば、一時的な快楽は得られるかもしれないが、継続的な幸福までは得られないということになるだろう。

何をテイクできるかより、何をギブできるか



「我慢レース」から抜け出すヒントをくれるのが、マネジメント誌『ハーバード・ビジネス・レビュー』に掲載された論文や記事をまとめた『幸福学』(ダイヤモンド社)である。

その中のペンシルバニア大学教育大学院シニアフェロー、アニー・マッキー氏による「職場での幸福は重要である」には、職場で幸せに働くために必要なのは、1. 展望、2. 意義のある目的、3. 共鳴する人間関係だと記されている。

また、ハーバード・ビジネススクール教授のテレサ・アマビールと心理学者のスティーブン・クレイマーによる記事「インナーワークライフの質を高める『進捗の法則』」は、有意義な仕事の「進捗」を確認することで幸せになると、調査から導いている。

これら2つの記事をまとめると、組織のビジョンに共鳴し、目的を持って、共感しあえる仲間とともに、日々前進していることを実感できる。そんな働き方が幸せにつながるということがわかるだろう。

かつて作家・鈴木光司氏に「人は何のために働くか」聞いたことがある。そのとき返ってきた答えは、「人類の進歩に貢献するため」だった。この回答から、持続的で深い幸福感を得るためには、「短期的に自分が何をテイクできるか」ではなく、「長期的に自分が何をギブできるか」という視点を持って働くことが重要だと気付かされる。

ビジョンのないまま数字目標の達成を課され、ただ食べていくためだけに有意義な目的を持てないまま地位財を取り合うように競って働く。そんな働き方から解放されたいなら、ぜひこの3冊をお勧めしたい。

連載:クリエイターの本棚
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文=川下和彦

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