新入社員が入社後のミスマッチなどを理由に早期退職するケースが多いという。近年の「売り手市場」も影響しているのだろう。入社時点で新入社員にどのような情報を、どのような粒度で共有するのかにより、仕事への意識や取り組み方も変わってくるのではないだろうか。
3年前にnoteで書いた「いま私が新入社員だったら、本気で教えてほしい10のこと」が長く「いいね」を頂戴しているので、再構成の上ご紹介したい。
1. 私の採用にはどれくらいの経費がかかっていますか。
新卒の採用経費は一般的に1人あたり約50万円と言われるが、これは直接的な採用コストであり、間接的に影響している施策の費用や人件費等も含めるともっと嵩んでいるのではないだろうか。
会社は自分を採用するためにどれくらいのコストを掛けたのか。それを知ることで、会社の採用の仕組みやコスト感覚を知るきっかけになる。ひいては新入社員の志にも関わってくるのではないだろうか。
2. これから必要とされる語学力について教えてください。
TOEICの点数は履歴書に書いたが、実務の場面ではどういった語学力が必要とされるのだろうか。外国語で読むのか、書くのか、コミュニケーションするのか、プレゼンするのか。どれくらいの優先度で英語をマスターしないといけないのか。むしろ中国語なのか。
仕事のうえで語学を身につける機会はあるのか。自主習得が求められるのか。海外勤務や留学の機会はあるのかも含め、早めに伝えておきたい。
3. 自社のビジネスモデルと、財務諸表の読み方を教えてください。
この会社の売上、利益を支えている商品・サービスは何か。流動資産や固定資産は。競合他社はどうか。今後の見通しは。
大企業ほど、自部門や担当部署については理解しているが、全体については見えていない、ということが往々にしてある。自社の財務状況を、ある程度自分ごととして捉えることでモチベーションにもつながる。
4. 社内で尊敬されている人について、その理由も含めて教えてください。
リスペクトされる人は、一体どういった能力や人間性を評価されているのだろうか。抽象的な「こうあるべき」よりも、実際にその人の言動を真似てみたい。
5. 問題のない範囲で、社内文書やメール、プレゼン資料を見せてください。
一通りのビジネスマナーや文書作成などのスキルが身についていたとしても、業界や社内における独特のお作法や言い回しは意外とあるもの。知らず知らずのうちに独特の表現が使われていたり、説明資料で好まれるフォントや級数があったり。 そんなトンマナは早いうちに知っておきたい。そのうえで、あえてこれまでにない表現でプレゼンする、ということも可能になる。
6. ヒット商品誕生の経緯など、過去の成功事例について詳しく教えてください。
新入社員に基本動作を教えることは重要だが、荒削りながらも、若者ならではの発想力と情熱で「価値を生み出したい」「何かを変えたい」と思って入社してきているはずだ。そんな新人の感覚をアテにしてみたい。
例えば過去の成功体験を共有する。ヒットした商品やサービスについて、アイデアが生まれた経緯や社内の通し方、ヒットの理由などのストーリーを詳しく知りたいはずだ。必ずヒントになるはずである。
7. 先人の失敗を共有してください。
一般的に「〇〇をしないように」と言われるより、「以前、××という失敗例があった」と具体的に共有される方がよりリアルに想像できる。 会社としてのリスクマネジメントを押し付けるのではなく、新社会人、新入社員であるあなた自身にどういったリスクがあるのかを、自分ごととして捉えられるようにしたい。
8. 家族の話や、休日の過ごし方について聞かせてください。
ワークライフバランスはわかるが、若い世代ほどワークとライフの別がつきにくく、ワークをライフにおける中心に捉えがちだ。周囲の先輩がどのように人生を楽しみ、時間の使い方や人間関係などについて、どのように折り合いをつけているのかを教えてほしいものだ。
具体的な話を聞いていくなかで、会社の各種制度の活用法や仕事との両立方法、今後のビジョンが見えてくるかもしれない。
9. 学生時代に使っていたSNSアカウント、正直、どうすればいいですか。
SNSでの失敗は自身だけでなく、会社にも多大な損害を招きかねない。匿名や、社名を伏せていたとしても、いざとなれば投稿内容や位置情報などからすぐに個人や所属先を割り出されてしまう。
学生時代から使っているアカウントをどのようにリスク管理するか、SNSの使い方も含めて早めに教えておきたい。 ただ、SNS自体を全てリスクとみなすのは馬鹿げている。最近ではSNS上でフォロワー数の多い学生を採用するといった「インフルエンサー採用」を行う企業もある。SNSを使いこなせているということは、コミュニケーション力や社交性、表現力を物語る要素でもある。
10. 仕事で落ち込んだときの、気持ちの立て直し方を教えてください。
長い社会人人生、誰にでも浮き沈みがある。一見、完璧に見える先輩がいかに過去の紆余曲折を乗り越えてきたかを知っておきたい。せっかく入社したのだから、浮沈を前提に息長く活躍してもらいたい。