加島:トップは「貢献」する相手がいないんです。だからこそ、これからの経営リーダーは、自分が引っ張る、牽引していく存在であることを、もっと強く意識してもらいたいと思います。
よく目にする光景として、ミドルクラスへの研修だと「そういうのは、上の層に言ってください」という言葉が往々にして聞かれます。また、シニア層に言うと「若い頃に聞きたかった」という言葉が多い。
伊藤:私は経営者として会社に入ると、「伊藤さんがどんな風に会社を変えてくれるか楽しみです」という人がいる。もちろん、私は会社の変革をミッションとして経営に参画するわけですから、やりますよ。でも、長年その会社で頑張ってきたはずの人から「お手並み拝見ですね」なんて言われると、本気で腹が立ちます。
加島:そして、伊藤さんのような人を「異端」とレッテルを貼る。それではだめなんです。また、何よりも大事なのは「創造のワクワク」です。エンジニアリングも大切ですが、経営にはこのワクワク感がないとだめです。
伊藤:いまJDIではBtoC向けの新たな商品開発をしています。これまでBtoBだけのビジネスをやってきた企業ですから、これまでの発想ではだめで、若い社員にどんどん発想させて、いろんなチャレンジをしている。
そのあるコンセプトモデルを、あるベテランが「こんなの売れるわけがない」と一刀両断にした。まさにふざけるな、ですよ。斜に構えて批評家ぶって、アイデアの芽を摘んでいるだけ。こういう人は1ミリも信頼しない。反対に、真剣に取り組んでいる人は信頼します。
加島:そういうところは、伊藤さんはピュアでフェアですね。いいものはいい。チャレンジしている人は認める。誰が言った言葉でも、いいと思ったら取り入れる。伊藤さんと仕事をすると、いままでは言われたことをやっていただけでは評価されない。けれど、「こんな発想をしていいんだ」「こんなやり方もありなんだ」と気がつく人たちが増えていくはずです。
伊藤さんとの仕事は「このゲームはワクワクするぞ」と感じさせてくれる。社員はいわゆるビジネスマシーンと違うので、この「ワクワクの伝染」が一番大事かもしれない。伊藤さんのビジネスからは、創造を大切にする意志と相手への信頼がある。だからワクワクできる。
知識に魂を込めるのがリーダー
加島:いまの日本企業はもっと危機意識を感じるべきかと思います。目を醒まさせないといけない。それをするには、伊藤さんのように「創造のワクワク」を持っている経営者、リーダーを増やすしかないと思っているんです。
私がやってきている研修のように、経営の知識や方法論、技術、考え方を学ぶことは大事です。でもそれは土台であって、その上に「何を積み上げていくのか」という視点が欠かせません。それが「創造のワクワク」です。
「創造のワクワク」は伝染し、それを感じる仕事をした人は、魅力から離れられなくなる。そして、その魅力は想いをもってひとりひとりに直接話していかないと、なかなか伝わらないと感じています。
リーダーを育てることができるのは、リーダーだけなんです。学んだ知識に魂を込めるのは、リーダーの仕事。そこでの学び、気付きが、どんどん連鎖していく。自分が気づいたワクワクを、その真髄を次の世代に伝えたいと思う、それは当たり前の気持ちだと思うんです。この流れを作っていきたいですね。