ビジネス

2019.04.01

経営者は「結果を出しながら、過程でワクワクさせてくれ」

今回の対談相手であるセルム代表取締役社長加島禎二(右)と筆者(左)


伊藤:私自身、外資系のバディシステム、メンタリングの中で育ってきました。だから、次の世代にも伝えたいという気持ちは強いです。しかし、いまの日本では若い世代の育成ができてない。シニア世代もまだまだやれるはずだと思いますが、成長しやすい年齢はある。その世代が今、学べていない。だから、うまくいかなくて辞めてしまう。いまの日本企業、特に大企業は若い世代を育てられていないことは問題です。

私は日頃から「日本企業は眠ってしまっている」と言っていますが、眠っている企業と目を醒ましはじめている企業の差は、経営者にあります。ただ忘れてはいけないのは、会社の経営の責任は経営者だけにあるのではないということです。

よく「全部社長の責任だ、社員は悪くない」という経営者がいるのですが、私は経営者の責任はせいぜい6割だと思っています。上がおかしなことをやっていると思ったら、指摘すればいい。でも、事なかれ主義だし、年功序列だし、減点主義なので余計なことは言わない。さっきも言いましたが「あなたの会社でしょう?」と思う。そんな社員しかいない会社でトップの首だけすげ替えてもだめですね。

だから、若い頃からトレーニングは大事だと思います。最近期待しているのは、起業のハードルが下がっていること。私の目から見ると「そんなので起業しちゃうの?」と思うようなアイデアで起業している。それが脅威ですね。なぜなら、それで失敗しても、その経験を生かして次のチャレンジをしてくるからなのです。

例えば、シリコンバレーでは、何度失敗したかも評価基準になっている。そこでどんどん、経営者として鍛えられていく。優秀な人がそうやって伸びていくと、大企業には人材が残らない。

加島:日本企業は発想を変えないとだめでしょうね。例えば、日本の大企業は世界レベルでみれば大半の企業はまだ規模が小さいといえます。世界のグローバル企業と比べれば、若い世代が活躍できる環境を作りやすいと思うんです。もともと様々なリソース、ブランド、チャネルは持っているんですから、それを生かして人材が活躍できるプラットフォームになるといい。

以心伝心、一対一で学ぶしかない

伊藤:そのためにも、経営者が変わらないといけないですね。いままでの経営者は全員、失格くらいのイメージですね。加島さんがいうように、エンジニアリングがいくら上手くてもだめだ。

加島:先に言った「ワクワクの伝染」なんです。人は見たことがない人にはなれない。やったこともないことはなかなかやることが出来ない。だから、そういう経営者にどんどん会って、自分にワクワクを伝染させていくんです。

伊藤:私の経験でいうと、そこは「できるかできないかで考えずに、やるかやらないかを考える」ということに尽きます。やると決める。その意志が一番大事です。

加島:そういうところが、とても人間らしいですね。創造の遺伝子は人間らしさです。エンジニアリングではなく、人が中心にいることが大事だと思います。これはINSEAD(欧州経営大学院)教授のW・チャン・キムが著した『ブルー・オーシャン・シフト』にも書いてありました。こういう「人間らしさ(ヒューマンネス)」のようなことは、本当に以心伝心、一対一で学ぶしかない。

伊藤:そういう場を一緒につくりませんか。目を醒ます場、覚醒塾のような場を。

加島:ぜひ、やりたいですね。いえ、伊藤さんの言葉で言うならば、「やる」ですね。



連載:魁であれ。変革の時代を生き抜くルール
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文=伊藤嘉明

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