ビジネス

2019.04.01 18:00

経営者は「結果を出しながら、過程でワクワクさせてくれ」

今回の対談相手であるセルム代表取締役社長加島禎二(右)と筆者(左)

今回の対談相手であるセルム代表取締役社長加島禎二(右)と筆者(左)

今回の記事では、次世代の企業人を育成すべく、多くの企業へ人材開発/組織開発コンサルティング、経営人材・リーダー育成(経営塾)を提供しているセルム代表取締役社長加島禎二氏をお迎えして、「次世代の経営リーダーに求められること」をテーマにお話をうかがった。

結局、人を変えるしかない

加島:私が多くの企業で研修を行う中で感じていることは、バブル崩壊後、いわゆる平成の30年間、総じて、日本企業は経営をエンジニアリングしてきただけで、何も生み出していないのではないかということです。

例えば昭和の時代、戦後の何もない時代から多くの日本企業が立ち上がり、世界で戦える企業にまで成長しました。本田宗一郎しかり、松下幸之助しかり、創業者と呼ばれる人たちはビジネスを創造してきた。

ところが昭和後期から平成にかけて、その土台の上で、真面目で優秀なビジネスマンでありエンジニアリングには長けているけれど、創造力がない人たちが経営を担ってきた感があります。もちろん、全員がそうではないのですが。結果だけではなく、その過程でワクワクさせてくれる人は貴重なんです。

伊藤:私は、多くの企業で経営再建を担うことが多いのですが、会社に入って周囲を見てみると、優秀な人はいます。ですが、オリジナリティが乏しい。

一を言えば確実に一を返してくれる。でもそれが二、三になってこない。算数で、4という答えを導き出すのに「2+2だよ」と教えられたら、それしかしない。「1+3」とか「0+4」もあるのに。これができないと、日本企業は世界で戦えない。

加島:そういったことを変えていくには、結局、人を変えるしかない。多くの日本企業の経営者は経営のエンジニアリングばかりしてきたと言いましたが、あえて厳しく言えば、延命措置しかしていないのではないかと思ったりもします。経営状態が悪いから、合併してなんとかしようという発想もありますが、本質である悪いところを変えていないのに、合併しても何も変わらないのではないかと思います。

今の若い世代は、上の世代、総じてバブル世代あたりの経営者層にかなり違和感を持っています。そういう経営者が多い、いわゆる日本の大企業では、辞めてほしくない人がどんどん辞めていくという現象が起こっています。しかも、その理由を経営陣で把握しきれていないという現状があります。

バブル世代は、企業への忠誠心が強いし、集団帰属意識も高い。貢献したいという考えが基本にあるんです。「貢献」という言葉は一見、いい言葉なんですが、実は、他力本願の言葉なんです。

素晴らしい経営者がいて、会社があって、はじめて貢献が生きてくる。逆にいうと、自身が会社を良くするとか、経営者視点で物事を考えるという機会が少ないように思えます。企業で次世代の経営リーダー育成をやっていると「自分が経営者になるなんて考えたこともなかった」という人がいる。というよりも、そういう人が圧倒的に多数派です。

伊藤:そんな人が経営者になって、人の上に立つと思うとゾッとしますね。私も経営者の研修をしますが、同じですね。よく新社長の挨拶で「図らずも…‥」とか「私のような未熟者が…‥」という言葉が出ますが、理解できない。そんな事を言う時間があったらビジョンを語れと怒りますよ。

仮にも何百人、何千人、場合によっては関連企業も含めて何万人という社員上に立つトップが「及ばずながら」なんて言うのはふざけている。本当に「及ばず」だったら社長になってはいけない。
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文=伊藤嘉明

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