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2019.04.01 09:30

4年越しで藤田晋を動かした起業家の熱意──ZEALS、資金調達の舞台裏

左から、サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋と、ZEALS代表取締役CEOの清水正大

スタートアップの取材を数年続けていて感じるのは、数字を駆使してロジカルな説明を得意とする起業家が増えたことだ。反面、「社会を変えたい!」といった壮大なビジョンをアツく語る人は少なくなったように感じる。

会話広告のチャットボットサービス「fanp(ファンプ)」を提供するZEALS(ジールス)は社会の現状を上手く捉えたサービスを展開しているが、代表取締役CEOの清水正大は、起業家としては明らかに後者。取材開始直後から熱いビジョンを前のめりに語り続ける、最近はあまり見なくなったタイプの起業家だ。

そんな清水が「個人的にも思い入れのある発表なんです!」と語るのが、今回のニュースだ。2019年4月1日、ZEALSがサイバーエージェントの若手経営者の応援を目的とした投資、いわゆる「藤田ファンド」及び既存投資家を引受元とし、総額3.5億円の第三者割当増資を発表した。

LPを代替。ユーザーに訴求するeコマース用チャットボット

ZEALSが創業したのは、2014年。もともとは代表取締役CEOの清水正大が受託開発として立ち上げた同社だが、ロボット開発のチャレンジで苦戦し途中で事業をピボット。その転機となったのは、2016年。マーク・ザッカーバーグの発表だ。

「フェイスブックが、Messengerをオープン化して誰でもチャットボットに参入できるようになったんです。この発表に衝撃を受け、僕たちはすぐさまチャットボットサービスをスタートしたんです。全世界でもかなり早いリリースでした」

チャットボットというと多くの人が思い浮かべるのが、ユーザーからのヘルプや問い合わせに文字形式の会話で応対する、いわゆる「カスタマーサポート」だろう。ZEALSも参入当初はこのサービスだったが、競合の著しい増加に伴っていち早く事業ドメインを変えた。

現状の「fanp」は、WebページやSNSのネット広告をクリックした後に表示される「LP(ランディングページ)」の代替を狙った「広告型のチャットボット」だ。



これまでネットの広告を経由して商品を購入する際には、「Web広告→LP→購入ページ」という導線を辿るのが一般的だったが、「fanp」導入企業では広告クリック後、すぐにフェイスブックメッセンジャーやLINEに遷移する。

「いままでのeコマースは、商品に興味をもって広告をクリックしたはずなのに、その後にLPでまた一から商品の説明をされるのが当たり前でした。着実に発展しているネット広告業界で、長期間にわたって大きな変化がなかったのがLPだったんです。ここをチャットボットに置き換えれば、質問への回答からユーザー属性を見極め、それぞれに適した商品を勧めることができる。購入の訴求がスムーズになるんです」

3月には史上初めてLINE Payと連携し、LINEのトーク上でタップするだけで商品購入まで完了するという、ほかに類を見ないサービス体験を実現。現在はロート製薬やメンズスキンケアブランドのバルクオムなどのコスメ業界、パソナやビズリーチといった人材業界などが「fanp」を利用している。

導入企業全体でのチャットボット利用ユーザーは40万人以上、直近半年の売上は月次平均127%のペースで成長しており、すでに1億3000万以上の会話データを収集しているという。
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文=野口直希 写真=ZEALS提供

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