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SNSで話題の「桜和傘」。美濃和紙を使い、岐阜産にこだわった逸品だ。

桜の季節に、若手職人がデザインした、とある和傘が注目されている。和傘と言えば京都や金沢のイメージがあるかもしれないが、実は日本最大の産地は岐阜。全国シェア約8割が岐阜で生産されているとも言われる。後継者不足や生産量の減少などの問題がある中、「岐阜和傘」のブランド復興の動きが芽吹き始めている。

岐阜和傘の若手職人、河合幹子が手掛ける「桜和傘」が、4月1日から限定販売が始まり、すでに予約が埋まるほどの人気ぶりだ。そもそも一点物として制作した桜型の和傘がSNS上で「美しい」と話題になり、色合いを変えて本数限定で受注することになったのだ。

きっかけは、2月1日に公開されたディズニー映画「メリー・ポピンズ リターンズ」。ジャパンプレミアで来日した主演女優のエミリー・ブラントに渡す和傘を制作する話が、東海エリアの放送局から河合に持ちかけられた。


エミリー・ブラント(Getty Images)

映画には桜の木々が象徴的に使われている。また同じく傘職人であった祖父が昭和中期に制作した桜の形の和傘の写真が資料として残っていた。河合自身も「桜型は技術と手間が必要な形状で、難しい」というが、桜和傘作りに挑戦することにした。

和傘の制作には大きく分けると、18ほどの作業工程があると言われる。河合は骨組みとなる竹などの部品を購入し、「つなぎ」と呼ばれる組み立てを別の職人に依頼し、和紙を張る作業から油引きや漆がけ、天日干しなど仕上げまでを一人で手掛ける。

桜型の試作では、和紙を張る土台になる親骨の長さの調整が難しく、デザイン通りにうまく行かず、一度は尖った花びらになってしまった。ここに丸みを持たせて、可愛らしい印象に。濃いめのピンクとラベンダーを組み合わせた色合いは、映画に出てきたエミリーの衣装から着想を得た。また補強するため帯状の和紙で縁取りをする作業も、通常の円型よりも手間が掛かった。

試行錯誤を経て、1カ月で完成。放送局の取材時に、河合がエミリー本人に桜型の和傘をプレゼントした。エミリーは「この色合いは衣装をイメージしたのね」とすぐに気付き、「ありがとう」と河合にハグをした。河合は「すごく喜んで頂けたと思います」と振り返る。またそれ以上の広がりに驚くことになる。

文=督あかり 写真=長良川てしごと町家CASA、河合幹子

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