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2019.03.30

ゲーム売上年間1.5兆円、中国テンセントを襲った政府の規制

Yu Chun Christopher / By Gettyimages

中国のテンセントは、政府のゲーム規制強化により大幅な減収に直面したが、その状況から脱しつつある。しかし、今後の業績には懸念も浮かんでいる。

中国当局は昨年12月にゲームの審査を再開し、テンセントは新たに8つのゲームの承認を獲得した。しかし、政府がレギュレーションを厳格化したことで、審査待ちの作品も増えている。

「テンセントはオンラインゲーム事業において、最悪の時期を脱した。しかし、同社の新規部門のクラウドや決済部門は黒字化を果たしていない」と調査企業、Blue Lotus ResearchのアナリストのAdam Xieは述べた。

テンセントは現在、北京の開発企業が製作した新作ゲーム「完美世界(Perfect World)」に期待を注いでいる。同ゲームは現在、中国のiOSストアのダウンロードランキングで6位に入っている。

また、大ヒットを記録した「王者栄耀(Honor of Kings)」にも新たな要素が追加され、月間アクティブユーザーは2億人となっている。テンセントのゲーム部門の売上は今年、前年比17%増の910億元(約1.5兆円)に回復すると見込まれる。

しかし、同社が昨年、中国での独占運営権を取得したバトルロイヤル型ゲーム「PUBG」は、現在も課金要素を追加できていない。中国政府はユーザー同士がお互いを殺し合う、ゲームの内容が残酷すぎるとして、課金の許可を与えてない。

アナリストは同社の最新作の「完美世界(Perfect World)」の今後についても、疑念の声をあげている。「RPG系のゲームはリリース直後には熱狂的支持を獲得するが、人気は長くは続かない」と上海のIHS Markitのアナリストは述べた。

今後の成長機会を模索するテンセントは、アリババが主要なポジションをとるクラウド事業や、デジタル決済部門の売上を増やそうとしている。

テンセントは2018年の第4四半期決算でクラウドやフィンテック、動画配信を含む「その他部門」の売上が前年同期比72%増の、242億元(約4000億円)に達したと発表した。しかし、マーケティング費用の増加により、最終利益は前年同期比32%減の142億2900万元(約2350億円)だった。

同社の支出に関しては今後、さらに減少する見通しもある。中国政府は女優ファン・ビンビン(范冰冰)の脱税スキャンダルの発生を受けて、セレブの高額なギャラを規制する方針を打ち出した。政府は、有名芸能人の出演料を作品の製作費の40%以内にする規制を敷いた。

この動きはテンセントの映画や動画部門の支出を減少させることになるだろう。一方で、同社はゲーム部門においても広告費用の削減を開始したとアナリストらは述べている。

「テンセントは今後も、マーケティング費用の見直しを進めていくはずだ」とBlue LotusのXieは話した。

編集=上田裕資

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