ビジネス

2019.04.02

サイドビジネスから本業への転換を導いた「外向きの志」|メドピア 石見陽

メドピア代表取締役社長 石見陽




経営へのコミットを後押しした、「本」と「人」との出会い

──元々ビジネスとは縁遠い医師という仕事から、なぜ起業という発想に至ったのでしょうか?

『ビジョナリーカンパニー』(ジム・コリンズ著)という本との出会いが大きかったです。この本では、偉大な企業というのは、「理念の最大化」と「利益の最大化」、どちらも備えているものであると書かれています。

医療界の人間は、どうしてもビジネスというとお金儲けという印象で敬遠する傾向があります。しかし、事業というのは利益も最大限追求するけれど、そのためには理念も最大限追求しないと、人もお客様もついてこない。逆に利益を最大限追うからといって、誰かを騙していいというわけではない。こういった考え方が自分の中でしっくりときて、ビジネスの世界に飛び込もうと決めることが出来ました。

他にも、私が親から受けた教育の影響も大きかったかもしれません。

メドピアの前社名は「メディカル・オブリージュ」でした。名前の由来はヨーロッパの貴族が大切にしている「ノブレス・オブリージュ」という言葉で、普段恵まれた生活をする人(ノブレス=高貴な人)には、戦争になったら最前線で戦う責任(オブリージュ=義務)が伴うという考え方を表しています。

私の親はその言葉自体は知らなかったのですが、まさにその考え方を幼い頃から教えてくれました。実家は裕福ではありませんでしたが、子供三人ともしっかりと教育の機会をもらい、おかげで医学部まで進めてもらうことができました。進学といった節目節目のタイミングで、親からは「勉強の機会が欲しくても無い人もいる。あなたはそのチャンスを与えてもらったのだから、世の中に対してちゃんと貢献しなさい。」ということを言われ続けていました。

もちろん患者を診るというのが医師にとって一番の社会貢献ですが、それ以外の貢献の仕方もあってもいいと思っています。私は今でも医師を辞めているつもりは全くなく、会社経営という仕事も、医師としての社会貢献の一環であると常に思っています。

──サイドビジネスとして創業してから本業になるまで、2年ほど期間がありますが、なにか後押しとなるようなことがあったのでしょうか?

やはり『ビジョナリーカンパニー』を読んで、利益を最大限あげて、それを再投資して世の中にさらに貢献していく、という考え方になれたのは大きかったです。

また、コミュニティサービスのミクシィが上場(2006年)して成長していったタイミングでもあり、インターネットの力で世の中を変えられる、と感じられたことも後押しになりました。

最後の決め手は、とある先輩経営者に「いろいろな会社の経営スタイルがあるが、中途半端な会社が一番世の中に迷惑をかける。やるならプライベートな会社で小さく続けるか、パブリックになって成長するか、どちらかだ。」と言われたことです。

「本」と、親や先輩経営者といった「人」との出会いが、私が起業、そして経営へのコミットに踏み切る決め手になってくれたと思います。

連載 : 起業家たちの「頭の中」
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文=下平将人 提供元=Venture Navi powered by ドリームインキュベータ

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