ペンス副大統領は、この目標の達成に向けNASAのチームが、あらゆる手段を講じて困難も克服するべきだと述べた。
「月面に降り立ち、史上初の女性宇宙飛行士と、それに続く男性宇宙飛行士は、アメリカから打ち上げられる米国製ロケットによって送り込まれる。米国はなんとしてでも、アメリカの宇宙飛行士を5年以内に月に着陸させる」とペンスは話した。
このスピーチを聞いたNASAのジム・ブライデンズティーン長官は今後、米国の月への復帰に向けた試みを加速させていくと述べた。
ペンスはNASAの超大型ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」が、官僚的な組織の問題を抱えていると指摘した。彼の「あらゆる手段を講じて」という発言の真意は、民間企業の力を借りてでも、2020年6月に予定される月の無人探査機打ち上げミッションExploration Mission 1(EM-1)を実行させたいという思いにある。
EM-1は4人が搭乗可能な宇宙船Orionのテスト発射のミッションだが、3月上旬にNASAは、打ち上げが2021年にずれこむ可能性を指摘した。NASAのブライデンズティーン長官は、それ以前にEM-1に民間ロケットを採用する可能性を示唆していた。
しかし、プロジェクトの実現を急ぐ一方で、NASAはこれまで140億ドルを投じたSLSプロジェクトを自身でやり遂げることを諦めていない。ブライデンズティーン長官は、これまで2週間に渡り民間への委託の、実行可能性の調査を行ったという。その結果、「いくつかの民間企業が候補にあがったが、いずれもEM-1を期限までに予算内で実行することは不可能だ」と長官は述べた。
「今後はさらにクリエイティブなアプローチでSLSの開発を進め、EM-1の2020年の実施に向けて動いていく」と彼は話した。
SLSの開発を民間に任せるべきだという声は高まっているが、Orionの打ち上げには巨大な重量を打ち上げるパワーが必要だ。SLSのプロジェクトで最も小型のBlock 1のペイロード(積載重量)は26トンとされる。しかし、スペースXのファルコンヘビーロケットが打ち上げ可能なペイロードは、その半分程度だとされている。
NASAの考えではOrionを用いた月への有人飛行を実現させるには、彼らが独自に開発したSLSを完成させるしかないことになる。