また、前職はユニバーサルでグローバル作品のプロダクションを担当していたスコット・スチューバーは従来の映画スタジオとの違いについて、ベラやシンディと同様に「柔軟性にある」と言う。
「ユニバーサルでの仕事は本当にエキサイティングで、さまざまなことを学びました。ネットフリックスで働いてみて感じることは、柔軟性が高く、ストーリーを最も適した形で届けられるということです。
中でも、オリジナルシリーズ『ゴッドレス ─神の消えた町─』が印象に残っています。この作品は従来の映画のように2時間で収めることができず、ドラマシリーズとして8時間ほどのストーリーにして配信しました。従来の映画スタジオの考え方では提供できなかった体験です。クリエイター、ストーリーテラーが最適だと思う形で提供できるようにすることが、素晴らしい仕事につながるのだな、と感じました」(スコット)
5つのアニメ制作会社と提携を結べた舞台裏
ネットフリックスの多様化を図る努力を語る上で、アニメコンテンツを外すことはできない。2018年1月に日本を代表するアニメ制作スタジオプロダクションI.G、ボンズと包括的業務提携契約を締結。そして2019年3月にはアニマ、サブリメイション、デイヴィッドプロダクションの3社と新たに業務提携を締結し、オリジナルアニメコンテンツの拡充に注力していくことが発表されている。
実際、今年に公開される予定のラインナップを見ても、その意気込みが伝わってくる。『ULTRAMAN』や『聖闘士星矢: Knights of the Zodiac』、『ケンガンアシュラ』といった国内外でも人気の作品をもとにしたタイトルが公開される予定だ。
「私たちがオリジナルアニメを通してやりたいことは、世界的な知名度を持つ日本のIP(知的財産)をもとに、日本でもトップレベルのアニメ制作会社と一緒に質の高いストーリーを届けることです。日本には世界でも知られるIPがたくさんあると同時に、プロダクションI.Gや東映アニメーションといった素晴らしいアニメ制作会社があります。彼らと一緒に取り組むことを一般的なスタイルとして、オリジナルアニメを制作しています」(沖浦)
2018年から1年ほどで5社のアニメ制作会社と提携を結んでいるネットフリックス。なぜ、これほどスムーズに提携が実現しているのか? その理由を沖浦は「東京に拠点を持ち、アニメコミュニティにコミットしているから」と語った上で、アニメ業界の変化にも言及する。
「これまでアニメ業界のビジネスはDVD、Blu-rayの販売に依存していました。しかし、昨年の数字を見ると売上が減っており、その結果、新たなビジネスモデルを構築するため、我々と仕事をすることに積極的になってくれているのです」(沖浦)