Forbes CAREER編集長


退職の意向を伝える、事業部長への昇進が決まる

人よりも器用で物覚えもよかった管。新卒で同社に入社し、2年目からトップセールスの類に入った。「今だから話せますが、当時は空アポを入れて、遊んでいたりもしました。それでも達成はしていた。ぬるかったと思います」と当時を振り返る。

「ぬるい」

24,5歳の伸び盛りの時こそ、焦る。すると管は日本でも屈指のネット広告代理店に応募、無事に内定を得る。

さあ退職だ、新天地だ。管は上司である現・ガイアックス執行役の野澤直人にその事実を告げに行った。

野澤「私が執行役に着任してすぐに管から退職の話を聞きました。まぁ異端な存在だったし、仕方ないなと思いつつ、じゃあ最後だし、胸の内を全て明かしてくれと言ったんです。

驚きました。彼ほど組織について真剣に考えている人間はいないと確信できたのです。提案する内容は全て的を得ていて、全てが組織のためになっている。『僕ならこうできた=会社でやり残したことがある』ということ。じゃあお前が事業部長をやらないかと打診したのです」

退職から急転直下、26歳という同社最年少で事業部長に就任する。「最年少」「事業部長」とキラキラした響きの掛け算だが、マネジメント経験のない管の四方には、イバラの道が広がっていた。

「そのマネジメント手法、本で読んだでしょ?」

1,2年目で仕事に慣れ、手を抜いても成果を出していた管の実態は皆、知っていた。「手を抜いているヤツが上に行くなんて許せない」、そんな批判と否定の眼差しが管には向けられていた。

ある時、「3年で売上を10倍にしよう」と事業部長就任前のMTGで掲げた。きっとみんなワクワクするんじゃないかと期待していたが、非難轟々。「そんなに働きたくない」「何を言ってるんだ、この人は」、辛辣な意見が飛び交った。

ある時、5つ歳上の部下にレビューする時間が訪れた。マネジメント経験のない管は必死にマネジメントの書籍を読みあさり、それを部下に説いた。すると、屈辱的な言葉が返ってきた。

「管くんさ、あの本に書いてあることを実践しているでしょ?バレバレだよ」

言葉で後頭部を殴られた。強く、激しく。

痛み、屈辱、憤り、悲しみ、失望。自分が情けなくて仕方なかった、その場からすぐにでも逃げ出したかった、と当時のことを管は回顧する。この瞬間から、ようやく管理職としての管の時計が動き出したのである。

「本で学んだスキル、それを真似するだけじゃダメなんですよね、本質が伴わなければいけない。一気に意識が変わりました。そのあと、様々な経営者、管理職の人とお会いしました。優れたリーダーは声を揃えて言ったのです、壁にぶち当たった時に使うのがマネジメントのスキルとフレームワーク。まずは、1対1でメンバーと向き合えと」

ゲストハウス
泊まるのは現地のゲストハウス。地域民との交流を何よりも大事にしている

斬新な改革の連続。結果、離職率は38%から「ゼロ」に。

人と向き合う。

メンバーの声を拾い上げた時に、全員から出たのが「労働時間」の問題だった。売上をあげるために営業施策に走るのではなく、まず社内の改革からスタートしたのである。

管「全員が終電まで働くような組織で、売上を10倍にするなんて言われたら、無理ですとなります。まぁ、それを自分は言ってしまったのですが(笑)。まずは余白を作らなければ、生産性も上がらない。そこで“リモートワーク”と“クラウドソーシング”の活用を決めました」

賢明なチョイス、だが、問題がある。属人的に各々が働いた組織において、新しい習慣を作るのは難しくないが、それを定着させる、習慣化させるのは至難の技。多くの企業でも失敗しているケースが見受けられる。

文=後藤亮輔

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