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ネットフリックスは、映画DVDの使用権をめぐり制作会社と交渉したり、DVD宅配や回収に必要なロジスティクスを調整したりといった、DVD事業特有の業務を急速に学んでいった。だが同時に、在庫が薄く需要が高い新作の露出をおさえ、あまり注目されない独立系映画などを推薦するシステムも構築した。DVDをすぐ配送できるよう、人気が高い作品ではなく、在庫が既にあり利用者が気にいるような作品がレンタルされるようにしていたのだ。

高度なマッチメーキング機能を持った推薦システムを構築することで、映画使用にかかる全体的なコストも下がった。一つの大作にこだわらないことで、知名度が低い作品を複数取り揃える資金ができた。そうしてネットフリックスは時間をかけ、世界最大の映画ライブラリーを手に入れたのだ。

そのため、アップルとネットフリックスの違いは大きい。ネットフリックスは現在、会員の好みや視聴習慣だけでなく、各話を視聴する時間や、一晩の間に何話見たかまで把握している。また、ユーザーが次に見たいと思うものを高度に予測するため、ライブラリーは何千ものカテゴリーに分類されている。ユーザーがネットフリックスを使えば使うほど、同社はユーザーが求めるものを正確に提供できるようになる。

同社はさまざまな実験を重ねている。例えば2013年、『ハウス・オブ・カード』13話を同時公開した際には、視聴者は平均で一度に2.5話視聴した。また最近では、SFドラマ『ブラック・ミラー』の最新作として、インタラクティブ(双方向)型映画『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』が配信された。こうした大胆な実験が行われている理由はネットフリックスの経営陣が勇敢だからというだけではない。同社には、取り組みの指針となるデータがあるのだ。

ネットフリックスの現在のイノベーションも、本質的には現状維持的な部分があると言える。ネットフリックスやフールー、ディズニープラス、HBO、そしてアップルの新たな動画ストリーミングサービスは全て、同じ市場シェアを争っている。しかし、アップルのような新たな参入者がネットフリックスのような市場の先導者を相手に持続的イノベーションで戦いを挑むとき、勝つのは多くの場合、市場の先導者だ。これは、破壊的イノベーションに関する30年にわたる研究の積み重ねが示していることだ。

最後にもう一つデータを挙げよう。ネットフリックスの現在のPER(株価収益率)は130で、アップルは15だ。つまり投資家は、1ドルの利益を得るために、アップルよりもネットフリックスに8倍高い投資をしたいと考えている。これは、株式市場が全体で出した結論なのだ。

編集=遠藤宗生

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