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I write about corporate innovation and innovation strategy.

3月25日に行われた発表会。ティム・クックCEOと人気テレビ司会者のオプラ・ウィンフリー(Photo by Michael Short/Getty Images)

アップル創業者の故スティーブ・ジョブズはかつて同社役員らに対し「何をしないかを決めることは、何をするかを決めることと同じくらい重要だ」と諭した。

ジョブズが1997年、アップルを経営破綻の危機から救うため打ち出したのは、デスクトップコンピューター2種と携帯用機器2種の4製品のみに注力する戦略だ。4つの目標セグメントに合わせた優良製品のみを残し、その他は全て生産を終了した。

これを踏まえると、アップルが今月25日のイベントに際し、iPad AirとiPad miniの新モデルに加え、AirPods 2、iMacのアップグレード版を発表したことは興味深い。ここに挙げたのは新たに発表されたハードウエア商品のみで、ノートPCユーザー向けには現在も、3色展開のMacBookと、MacBook Airが2機種、MacBook Proが3機種用意されており、搭載するマイクロプロセッサーやストレージ容量も選べるようになっている。ジョブズならばきっと、経営陣に対し「私は友達に、どれを買うように勧めればいいのか?」と疑問を呈するはずだ。

ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授いわく、イノベーションには3つのタイプがあり、「全てのイノベーションが平等に創られてはいない」。最も一般的なイノベーションは既存商品の改善持続で、より高いパフォーマンスを求める顧客を標的としている。

アップルが米国特許商標局(USPTO)から取得した特許からは、同社が「可変反応キーとキーボード」を開発中だということが分かっている。これは各キーの重さを指の強さとタイピング速度に合わせて変化させるもので、典型的な持続的イノベーションだ。

同じことがiPhone Xにも言える。大半のユーザーは、顔認証や有機EL(OLED)画面に引かれて単にiPhone 7から買い替えている。持続的イノベーションは既存の市場シェアを維持する上で重要だが、市場拡大にはつながらない。アップルの最近の利益が伸び悩み、売り上げが下がっている理由はこれで説明できる。

それと対照的に、初代iPhoneは市場を作り出すイノベーションで、スマートフォンやアプリの新たな市場を作り出し、それまでは存在しなかった消費者層を生み出した。

アップルが2019年に直面する真の課題は市場シェアを巡る闘いではなく、新たな成長の波を解き放つことだ。よって、アップルが発表した動画ストリーミングサービス「Apple TV+」は大きな注目を集めている。だがアップルは出遅れた。初期の参入企業は機器ではなくソフトウエアを基盤とし、既に圧倒的な配信経路と高度なデータアナリティクスを構築している。

ユーザー行動データは、ゲームやテレビ番組、音楽の分野でヒット作品を作りコンテンツをまとめる上で常に重要なものとなってきた。時価総額1500億ドル(約16兆6000億円)のネットフリックスは、映画と視聴者をマッチングする究極の存在だ。そして覚えておくべきなのが、リード・ヘイスティングスとマーク・ランドルフによる1997年の創業当時、ネットフリックスは宅配DVDレンタルサービスを提供するスタートアップだったことだ。

編集=遠藤宗生

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