「ストーリー」がキャリアの弊害に 必要なのは相手を見極めること

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また面白いことに、各職種のコミュニケーション手法に関するステレオタイプが正しい傾向にあることが分かった。アンケート調査のデータからは、情報技術(IT)や財務、運用の分野ではストーリーよりもデータを好む人が多かったことが示された。一方、営業やマーケティング、人事ではストーリーが事実やデータよりも説得力を持っていると認識されていた。

事実重視型とストーリー重視型の両方の人にうまく語りかける上で障壁となるのは、テクニックの不足ではなく、考え方だ。私たちは、誰もが自分と同じ人間だと思い込んでいる。他者が自分のように考え、コミュニケーションを取り、合意し、振舞うものだと思い込むこうした傾向は、「偽の合意効果」と呼ばれる。

言い換えれば、人は他者が実際よりも自分に似ていると考えてしまいがちということだ。ストーリーテリングの文脈でいえば、感情的でドラマチックなストーリーを語るのを得意とする人に説得される人は、同じく感情的でドラマチックなストーリーを聞いて説得される人の割合が実際よりも高いと考えてしまう。

偽の合意効果を踏まえると、「事実は語るが、ストーリーは売れる」という言葉が信じられるようになったのも全く不思議ではない。しかし私が本記事で示したいのは、この思い込みを真剣に見直し、特定の職場でキャリアを成功させる最善の手段がストーリーなのかどうかを見極める必要性だ。

そのためには上司や役員らに対し、情報をどのような方法(事実とストーリーのどちら)で得たいかを尋ねること。そうすれば、2つの重要な目標を達成できる。1つ目はもちろん、説得力と訴求力があるプレゼンにするために必要な情報を得られることだ。

2つ目は、相手に対する尊重と共感を示せることだ。あなたが上司や役員などの時間や関心を大切にしていること、相手が自分を理解するよう強いるのではなく、相手に寄り添うよう努力する意思があることを示せる。

あなたがCEOや取締役会長だったとしたら、プレゼンを自分に合わせて作り、自分が聞きやすい方法で伝えるために時間をかけて努力した人に説得されるのではないだろうか?

編集=遠藤宗生

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