「ストーリー」がキャリアの弊害に 必要なのは相手を見極めること

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営業やマーケティング分野で一般的なアドバイスとして、「stories sell(ストーリーは売れる)」がある。またはもう少し長いものとして、「facts tell but stories sell(事実は語るが、ストーリーは売れる)」がある。これは正しいアドバイスであることが多いが、職場で上司・役員・投資家に対して接する場合には、あなたの評判を損ねてしまう恐れがある。

自分の会社の最高経営責任者(CEO)、取締役会長、大口投資家が、分析的あるいは直感的なコミュニケーションを取る人だったとしよう。直感的な人は、細かい話は抜きにして重要な部分に切り込むことを好むし、分析的な人はきちんとした事実や数字、具体的な証拠を多く含むデータで固めたコミュニケーションを好む。

こうしたタイプの人に呼び出され質問を受けた時、あなたに求められているのはストーリーだろうか、それとも確かなデータだろうか? 相手が分析的、あるいは直感的な人だとすれば、感情を揺さぶる裏話ではなく、データを求めていると考えて間違いない。

私が創業したコンサルティング企業リーダーシップIQ(Leadership IQ)で実施したインターネットアンケート調査「あなたのコミュニケーションスタイルは?」では、回答した18万人以上のうちの半分近くが分析型、あるいは直感型のコミュニケーション手法を取っていること分かった。

つまり、あなたが次の会議でこの2タイプの人と遭遇する確率は非常に高いということだ。そこでプレゼンテーションをストーリーで始めれば、あなたのメッセージは無視されるか、さらには聞き手をいら立たせてしまうだろう。私が言いたいのは、素晴らしいストーリーテリングのスキルは不要ということではなく、会話する人の半分近くがストーリーだけでは説得できないということだ。

また別のアンケート調査「あなたのプレゼンテーションのスタイルは?」では、回答者に次の2つのいずれかを選ぶよう求めた。

・ストーリーは事実やデータよりも説得力があると思う
・事実やデータはストーリーよりも説得力があると思う

1万人以上の回答を分析した結果、事実やデータよりもストーリーに説得力があると考える人は55%で、データを選んだ人は45%と、またしてもほぼ五分五分の結果となった。ストーリーよりも事実やデータに納得する人と遭遇する確率は低くないということだ。
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編集=遠藤宗生

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