ビジネス

2019.03.30 12:00

ベンチャーマインドが根付く「未来の国」 ニュージーランドの可能性

ニュージーランドで起業10年目を迎えた、Lake Edge Nomad Ltd.代表・四角大輔氏。撮影:富松卓哉


産学官民の垣根がなくなり、「起業」の概念自体が変化し、その在り方も多種多様になっていく世界的潮流の中で、これからの起業家に必要な思考は一体どんなものなのでしょうか。
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世界60か国以上を訪れ、行く先々で多くの若手起業家と話をしてきた四角氏はこう語ります。

「これからのビジネスシーンを担うミレニアルやZ世代にとって、環境問題や社会課題を背景にした、包括的な思考を持つことは当たり前。これまでの前時代的な発想で経済活動を続けていったら地球に住めなくなることを、彼らは本能で理解しています。国や人種関係なく、みなが社会問題を解決したいという本気の想いを持っていることに驚きました」

特にニュージーランドには、そんなソーシャルな起業家がとても多いそうです。
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「モノに溢れる今の世界では、レッドオーシャンに突入するようなビジネスは、はっきり言ってもう必要ありません。そこには、価格競争や大量生産といった前時代的発想で切り込まざるを得ないからです。これからは、ブルーオーシャンでの新規事業、社会を変えるイノベーションだけを考えて起業すべきです」

そう話す四角氏は、起業家の卵や学生から相談されるたび、すでに存在するモノやサービスは資源と人生の無駄だから作らなくていい、と強くアドバイスしてきました。自分自身または世界の誰かが心底から必要としているもの、まだこの世にないものだけをクリエイトしてほしいと。

「そもそも人間の体は100%有機体であり、自然の一部。そんな自然の一部である人間の心の奥底から浮かんできたビジネスが、過当競争や大量廃棄前提という非クリエイティブな手法で、地球や他の生命を傷つけるものであるはずがない」。四角氏が出会ってきた次世代のリーダーたちは、そのことをあたり前の感覚として持っており、そこに未来と希望を感じるのだと言います。

世界全体で、今、特に見逃せない成長マーケットは、サステナブル文脈を持ったものになっています。SDGsが広まり、循環型経済・サーキュラーエコノミーが注目を集め、今までは慈善事業でなければできないと言われてきた社会課題の解決が、ビジネスとして成立する土壌が整ってきました。

ニュージーランドはもちろん、ドイツやデンマークといった環境先進国では、オーガニックやエシカルといった文脈のビジネスモデルが多数出てきています。

「世界ではこういったサステナブル市場は“きれいごと”ではなく、もはや成長産業です。誤解を恐れず言うならば、もしあなたが今、何かの社会問題に気づいているのなら、そこにはとんでもなく大きなビジネスチャンスがある。いよいよ、資本主義の仕組みを利用して世界をいい方向に変えられる時代に突入したのです。ぼくは、そんな素晴らしい21世紀に生きられることを幸せに思い、興奮を抑えきれません」


四角大輔◎地球との共生というテーマを掲げ、行き過ぎた大量消費社会と距離を置く暮らし方「ライフスタイルシフト」を提唱する執筆家。ニュージーランドの原生林に囲まれた湖で、オーガニック&サステナブルな半自給自足の生活を実践しながら、場所の制約を受けない働き方を構築。レコード会社プロデューサーとして数々のヒットを創出した経験を活かし、企業やブランドへのアドバイザリー、6団体の役員、上智大学非常勤講師を務める。著書に『人生やらなくていいリスト』『自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと』等。

文=佐藤祥子 取材協力=ニュージーランド大使館商務部 ニュージーランド大使館 エデュケーション・ニュージーランド Creative HQ

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