ビジネス

2019.03.30

ベンチャーマインドが根付く「未来の国」 ニュージーランドの可能性

ニュージーランドで起業10年目を迎えた、Lake Edge Nomad Ltd.代表・四角大輔氏。撮影:富松卓哉


大自然のなかで
大自然を背景にテクノロジーを駆使する人々の姿は、ニュージーランドでは当たり前の光景。

このように、テクノロジーと自然、ハードとソフトの両輪をバランスよく回すニュージーランドを、四角氏は近著「LOVELY GREEN NEW ZEALAND 未来の国を旅するガイドブック」で、“未来の国”と表現しています。

「ニュージーランドを“未来の国”と表現したのは、そこに人類の未来の在り方を見たからです。自然を愛する人たちは、時にテクノロジーを悪だと言う。ぼく自身も約30年アウトドアアスリートとして大自然への冒険を続け、森の中で半自給自足のサステナブルな暮らしを営むほど自然を愛しています。でも同時に、人類が生み出したテクノロジーの可能性を信じていて、他の動物にはない人間独自のクリエイティビティにかけたいと本気で思っているんです。

人類が生み出したテクノロジーの可能性に悲観して絶望するというのは、つまり、人間である自分自身を否定する行為。折角この世に生を受けた自分自身を否定するのは悲しく、それよりも自らの可能性を信じたいとは思うのは自然なことです」

人類が今まで築き上げてきた進化の産物を否定せず、それを活用して自然との共生を模索する。そこに、本当の意味での未来を見出せると信じている四角氏は、「どちらか一方に偏りすぎないニュージーランドの絶妙なバランス感は、共創の時代に何より大切な感覚でしょう」と言います。

サステナビリティは綺麗ごとでなくビジネスチャンス

バックアップ
政府機関が率先して、若い才能をバックアップする仕組みを整えている。撮影:富松卓哉

ニュージーランドは、次世代のビジネスリーダー育成にも積極的。政府機関としてインキュベーション組織「Creative HQ」が存在し、国を挙げての起業支援を行なっています。

同組織では、スタートアップや企業、他政府機関を対象として、過去6年間で20を超えるアクセラレーションプログラムを実施。そのうち、スタートアップ向けの3カ月集中プログラム「Lightning Lab」では、1900万ドルの未公開株式投資を調達、プログラムにおける企業の総評価8200万ドル、1000人の起業家を輩出という実績を上げています。

そこにピーター・ティールをはじめとするIT長者やシリコンバレー発のVCがこぞって投資。初期段階のベンチャー創出、国全体のイノベーション推進、エンジェル投資の加速など、ニュージーランド経済に大きな影響を与えていることは想像に容易でしょう。

四角氏自身も、レコード会社時代のプロデュース経験をもとに、クリエイターや起業家のインキュべーションに従事。エンジェル投資家としてのベンチャー出資、外部顧問、IBMのスタートアップ支援「BlueHub」のメンターを担うなどしてきました。最近では、環境省主催のSDGsに則した若手起業家発掘プロジェクト「ウィルラボ」にメンターとして関わるなど、次世代ビジネスリーダーのサポートに注力しています。
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文=佐藤祥子 取材協力=ニュージーランド大使館商務部 ニュージーランド大使館 エデュケーション・ニュージーランド Creative HQ

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