ビジネス

2019.03.30

ベンチャーマインドが根付く「未来の国」 ニュージーランドの可能性

ニュージーランドで起業10年目を迎えた、Lake Edge Nomad Ltd.代表・四角大輔氏。撮影:富松卓哉

ビジネスシーンで今にわかに、ニュージーランドが存在感を増してきている──。

「ニュージーランド」の一般的なイメージは未だに、大自然と草を食む羊たち、という牧歌的なものでしょう。しかし、銀行大手HSBCが発表した「理想的な海外移住国」ランキングで2位を獲得したこの国は近年、ビジネス関連のランキングでも上位に躍り出てきています。

そんなニュージーランドに、それまでの輝かしい栄光を捨てて移住した人がいます。Lake Edge Nomad Ltd.代表、オシロ共同代表、the Organic副代表理事、ほか3団体の役員を務めながら執筆活動を続ける四角大輔氏。お忍びで訪れる起業家や著名人の移住相談にのっているという四角氏に、これから起業家に必要な思考を聞いてきました。

失敗を恐れず挑戦するベンチャーマインド国家

ベンチャー姿勢
ニュージーランド最大のコワーキングスペース「Biz Dojo(ビズ・ドージョー)」。出会いと学びの場になるようにという想いを込め、日本語の“道場”からスペース名を名付けた。撮影:富松卓哉

国土面積は26万8107平方kmと、日本国土の4分の3ほどしかないニュージーランド。そんな小さな島国に、レコード会社プロデューサーとしてミリオンセールスを連発していた四角氏が移り住み、起業したのは2010年のこと。

起業のしやすさと投資環境の良さで知られるニュージーランドは、世界銀行による「ビジネス環境」最新ランキングで、昨年に引き続き世界190カ国・地域中トップを獲得。ヘリテージ財団発表の「経済自由度指数」ランキングでは、180カ国・地域中3位を記録しています。

ピーター・ティールをはじめとするIT長者が続々と移住しているというニュースも記憶に新しいですが、各国から起業家の移住が絶えない同国は、移民を積極的に受け入れ、人口も増加の一途の多民族国家。昨今、声高に叫ばれる“多様性”を凝縮したような国家の政策は、世界でも異彩を放っています。

「ぼくは、幼い頃から“常識フォーマット”や同調圧力に押し込めようとする日本社会に馴染めませんでした。そんな中、大好きな自然がきっかけで知ったニュージーランドの自由でイノベーティブな文化に惚れ込み、移住という夢を15年以上かけて叶えたんです」と四角氏。

この国が起業しやすい国とされるのは、起業手続きがウェブで10分ほどで完了し、コストも150NZドル(約1.2万円)しかかからないという点に加え、この国のベンチャーマインドにその理由があると言います。

「ニュージーランドでは、前例がなく多少無謀な挑戦であったとしても、“無理だ、諦めろ”などと言わず、みんな手放しで応援してくれる。その根底には、移民というゼロ地点から始まった国の歴史もあるでしょう。国土も小さく人口も少ない。経済力も資源も、競争力もない。そんな小さな島国が“フォーマット”を作って守りに入っても、何にもならないということを十分理解しているんです。起業と移民の促進、そしてクリエイティブな挑戦をすることで、この国は成長を続けています」

地震帯・火山帯の上にある島国という国土をはじめ、日本との共通点を語られることが多いニュージーランド。挑戦することを厭わないそのマインドセットに、日本も学べる部分が多そうです。
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文=佐藤祥子 取材協力=ニュージーランド大使館商務部 ニュージーランド大使館 エデュケーション・ニュージーランド Creative HQ

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