手続き記憶とプルースト効果
徘徊や暴言といった認知症の周辺症状がある方も、鏡の前に座って、「パーマ屋ですよ」とか「理容師ですよ」と声かけすると、一瞬懐かしい顔をして、「じゃあ、いつもみたいにパーマをかけてちょうだい、先生」とおっしゃる方もいる。
ポマードやパーマの薬剤の匂いで、昔の話を始める方も多いので、昔から使用されていた化粧水や整髪料、例えば「ブラバス」や「マンダム」、「ダイエースプレー」といった懐かしい香りがする商材を使用する場合もある。
特定の匂いで関連する記憶を呼び覚ます現象を「プルースト効果」と呼ぶが、認知症の方にその方の懐かしい想い出と結びついた香りを嗅がせたところ、今までは全く思い出せなかった家族のことなどを思い出した、という症例が数多く報告されているそうだ。
認知症になっても、包丁の使い方や車の運転の仕方など年にわたって身体で覚えてきた・身体に染みついた「手続き記憶」は比較的残りやすいと言われている。
どのように認知症社会を乗り越えるのか、我が国は大きな転換点に立たされている。ここで私たちがどんな意図を持って、私たち自身の人生100年時代をどうデザインするかに未来は委ねられている。
◎認知症を知るために実践すべきこと
「認知症」について言葉だけの理解にとどまっているのであれば、実際に認知症の方々と触れ合い、ともに生活をしていく機会を増やす。そこでの生の気づきが、新しいイノベーションに繋がる。
「注文を間違える料理店」や「VR認知症体験」など、認知症を理解しようという様々な取り組みが行われている。介護や医療の専門家だけが、認知症や介護の問題を考えるだけでは、もう我が国の高齢化の現状に対応できない。評論よりも、実践が求められるのだ。
全ての業種で認知症によって起こりうる問題や不便さについてもっと知り、考える必要がある。そして、それは同時にビジネスチャンスを見つけていくプロセスでもある。
高齢問題の研究者らでつくる日本老年学会などは2017年、現在は65歳以上とされている「高齢者」の定義を75歳以上に見直し、前期高齢者の65~74歳は「准高齢者」として社会の支え手と捉え直すよう求める提言を発表した。
ロンドンビジネススクール教授リンダ・グラットンの著書「ライフ・シフト」により、日本でも「人生100年時代」というムーブメントが起き、首相官邸でも「人生100年時代構想会議」が設置され、議論が重ねられた。
若い時は鏡をしょっちゅう見ていたのに、年齢とともに鏡を見る習慣が減ってくる。ふいに鏡に映る自分の姿を見て、老け込んだ姿にショックを受けてしまうという人も多い。
鏡を見る時間が長いほど美しさも正比例するという。つまり、鏡をつねに見ている人は、いつまでも綺麗で若くいられるということだ。
あなたは今日、何回「鏡」を見ましたか?