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2019.03.31

働きながらジャーナリズムを学ぶ意味 早稲田大ジャーナリズムコース修了生の肖像

(Kiyoshi Hijiki / Getty Images)


「まず現場に行き、話を聞くことが大事と学びました。勉強するうち、日本でメディアの仕事をしたいと思うようになり、就職活動をしてテムジンに決まりました」
 
初めの1年半は、情報番組のアシスタントディレクターとして、国内の職人を訪ねる企画を担当し、取材の段取りを身に付けました。2015年の秋、初めて自分のドキュメンタリー企画が採用されました。中国の環境汚染がテーマです。半年かけて中国に何度も足を運び、50分の番組を作ってNHKのBSで放映されました。その後も、精力的に取材しているそうです。
 
●技術・専門性を持つジャーナリストを育成
 
早稲田大政治学研究科にJスクールができて以降、報道を取り巻く環境は大きく変わりました。インターネットのニュースは当たり前になり、その質や真偽を判断する必要があります。
 
そのような中、スクールは①「個」として活躍できる人を育てる②写真や映像も撮れてウェブの技術を備える③専門性を持つ、といった目標を掲げています。近年、ネット情報の真偽 を判断する「ファクトチェック」や、データ・ジャーナリズムにも力を入れています。
 
開設10年を機に早大が1期~8期を中心に集計したデータによると、修了生は409人。日本人学生と留学生はほぼ半々で、進路は全国紙・地方紙・通信社に43人、放送局に20人、出版社に7人。ITメディアへの就職も増えているそうです。
 
●社会人が学びの機会を作るには
 
筆者の場合、新聞社に勤めた20年の間に、取材・執筆だけでなく、撮影や編集の技術も身に付けました。独立した今、記事を作る際に自分で作業できて役立っています。学生のうちに、そうした具体的な技術を実践するのは大事だと思います。
 
Jスクールには、課題も見えました。プログラムマネジャーの瀬川至朗教授は「社会人学生が少ないですね。設立当初は、学生の半数を社会人のリカレント教育にしたいという目標がありました」といいます。2020年度入試から、社会人向けに1年で修士課程を修了できるコースを新設するそうです。
 
筆者は新聞社を退職後、ジャーナリズムの専攻ではありませんが、大学院に2年通いました。20代の学生とは価値観が違ってカルチャーショックが大きく、仕事と子育てをしながら単位を取るのは大変でした。
 
でも、物事を分類して考察する方法が身に付き、プレゼンテーションの練習もできたので、仕事の補強になっています。修士論文は、仕事上の取材分野でもある「障害者の就労」をテーマにし、仕事と研究を交差させて双方にいい影響がありました。
 
社会人として現場で働いてから学ぶと、吸収できるものが多いです。ただ、社会人が大学院に通うには、職場の理解や金銭面などクリアすべき問題もあります。「人生100年時代」の今、キャリアの中で学びの機会をどうやって作るか、改めて考える時が来ています。

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