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2019.03.31

働きながらジャーナリズムを学ぶ意味 早稲田大ジャーナリズムコース修了生の肖像

(Kiyoshi Hijiki / Getty Images)

早稲田大大学院の政治学研究科ジャーナリズムコース「Jスクール」は、国内で初めてのジャーナリズム大学院として2008年4月にスタート。メディアの現場で活躍する修了生も増えました。この10年ほどで、報道をめぐる環境も大きく変化しています。修了生に取材して、コースの利点と課題を考えました。
 
●キャリア20年、エンパワメントに
 
米軍・普天間飛行場の辺野古への移設問題に揺れる沖縄。琉球朝日放送の島袋夏子さん(45)は、2018年3月にJスクール(修士課程)を修了しました。今は、ニュースデスクとして多忙な日々を送っています。
 
島袋さんは山口朝日放送に10年ほど勤務し、2007年に琉球朝日放送へ。「駆け出しの頃は、警察や市政・県政の取材を経験し、今の会社では米軍基地問題を担当しています。働き始めて20年の節目を迎え、エンパワメントしたいと思い、大学院を志しました」
 
修士課程は通常2年ですが、特別に1年間の課程を認められ、会社を休職して上京した島袋さん。前期は1か月に20以上の課題があり、寝る時間も削ってレポートや発表の準備をしました。他の学生がどのぐらい予習しているかわからず、とにかくやるしかない状況。授業以外は、自宅で勉強漬けでした。
 
「学生生活は20年ぶり。授業の登録やレポート作成など、昔は手書きだったものが、今はすべてパソコンです。本当にやらなければならないことに入るまでが大変でした。一般教養は、ただただ大変で。論文の基礎を学ぶクラスも、今までは好きなように記事を書いてきたのに、厳しく指導されました」
 
●地図・グラフで理論的に事実を伝える
 
後期は12単位を取りながら、修士論文の準備。論文はルポで、「返還後用地の土壌汚染問題」をテーマにしました。
 
「会社で2011年から取材していて、ドキュメンタリーを何本か作りました。私は大学時代に理系ではなく、調査報告書を読んで自分の理解で書いてしまって大丈夫なのかと葛藤がありました。Jスクールの瀬川至朗教授は、新聞社の科学記者だったので、ノウハウを学びました」
 
島袋さんは、Jスクールで科学に関するクラスを積極的にとりました。「軍用地が汚染されていたのはなぜか、どういう意味を持つか。地元の人でないとわかりにくいので、教授から『汚染の状況を地図にしては』『地元自治体と国の評価が違うのでグラフにしては』などとアドバイスを受けました。そういう手法を使うと、足りない情報は何かが見えるし、理論的にわかりやすく伝えられ、様々な分析ができると知りました」
 
島袋さんはJスクールを終えて会社に戻り、学んだことを仕事に生かしています。「中堅の記者に、こうした学びの機会があるのはいいと思います。1年だったので、経済的にも仕事との兼ね合いでも、ハードルをクリアできました」
 
●「話を聞く大切さ」を学び、メディアに就職

Jスクールでの体験をきっかけに、メディアに就職した修了生もいます。社会派のドキュメンタリー番組を制作する会社「テムジン」のディレクター・房満満さん(29)は、2014年にJスクールを修了して入社5年目です。
 
中国出身の房さんは、日本の大学への留学を経て2011年から2年半、Jスクールに在学しました。メディアの歴史や文化論などを学び、2つのゼミに参加しました。授業のほかに、大学院の有志の集まりがおもしろかったそうです。取材テレビのドキュメンタリー番組を見たり、沖縄や中国・韓国に研修に行ったりしました。
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