ディズニーのミュージカルに学ぶ、エンタメビジネスのグローバル展開


ミュージカル界では、『キャッツ』や『オペラ座の怪人』などを生み出したアンドリュー・ロイド・ウェバーとキャメロン・マッキントッシュが国際化の先駆者となり、1980年代からレプリカのスキームで英語圏外で上演。日本やドイツは、初期からこのスキームの受け手となってきた。
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グローバルな映画を多く保持するディズニーは、1998年以降にその足跡を辿り、業界一になった。なぜレプリカ形式をとるのか、コーレン氏は以下のように語る。

「現地のキャストとスタッフ、その国の言葉で届けることで、“身近な作品”だと感じていただきたい。現地のお客さんに、『アメリカの作品が数カ月間のツアーにきている』と思われるのではなく、コミュニティの一部になることが大事です」

もちろん、ブロードウェイのクオリティを届け、ブランドを管理するという意図もあり、「3カ月に1度は現地に確認に行きます」と、そのためのチェックもぬかりない。しかし、こうした中で海外の公演から学ぶことも多いと言い、例えば『ライオンキング』では、日本の衣装チームが発案したより軽い衣装をブロードウェイにも取り入れている。
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一方、マーケティングやPRなど国により全く異なるため、そこは現地のプロデューサーを全面的に尊重する。クオリティを保ちつつも「身近な作品」と感じてもらい、現地に即したコミュニケーションで生活の一部になっていく。それが作品がロングランし、ブランドとして愛される秘訣だ。

ちなみに、興行における日本とアメリカの大きな違いは観客にある。「日本の観客はアメリカよりも比較的若く、女性の比率が多いです。そして、アメリカよりもストーリーを心で受け止め、夢中になってくれる様に感じています。また、役者がステージ上、舞台裏でも非常に訓練されていますね」とコーレン氏は言う。

グローバル展開に向かない作品もある

クオリティがコントロールされるレプリカ公演でも、翻訳でそれぞれの文化を取り入れていくことは重要なポイントとなる。そのためディズニーでは、翻訳家とは別に、作品を理解し、文化的な相談にのってくれる人を必ず雇う。特にコメディは、国によって捉え方が大きく異なるので多くの変更が加えられる。

現地文化との融合では、近年ブロードウェイでも上演している『アラジン』が、インドで現地の劇団により、ボリウッド要素を加えながら「ノンレプリカ」で展開されているのはいい例だ。インドはディズニーが注目している地域で、実験的に現地の演出を取り入れることを了解したという。

もちろん、ストーリー自体が観客に響くかどうかも肝心である。ブロードウェイを題材にした『プロデューサーズ』はトニー賞で12部門を受賞した名作だが、NYでしか成功しなかったのは、ニッチなストーリーで他の都市の人は共感しにくかったからだと言われている。

その点については、「作品が普遍的に響くための要素を挙げるのは難しいが、逆にグローバルに成功しにくい作品は分かりやすい」とコーレン氏。実際、ブロードウェイで大成功を収めたディズニーのミュージカル『ニュージーズ』も、道端で新聞を売る主人公「ニュースボーイ」の存在はアメリカ特有の社会問題だったので、大規模な海外展開を行なっていない。
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文=Ikumi

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