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2019.03.28

「多様性」こそが次なる成功の秘訣──ネットフリックスが描くエンタメの未来

ネットフリックスLAオフィス「ICON」のエントランス


コンテンツの多様性を維持し、メンバーに優れた視聴体験を提供すべく、ネットフリックスは新しいエンターテインメントのあり方も模索している。それが2018年12月に公開された初のインタラクティブ実写作品『ブラック・ミラー: バンダースナッチ』だ。

「伝統的な一般的なテレビ放送では提供できなかった体験をしてもらうために、我々は常に実験をしています。ただ“インタラクティブ作品”という新しいコンテンツの形を最初に試してもらうメンバーとして、大人は適切ではありません。新しいことに最も寛容なのは子どもたちです。そこで、2017年にキッズ向けのインタラクティブアニメ作品を配信しました。まずは彼らにインタラクティブ作品を試してもらった結果、良い反応を得ることができ、そこで初めて大人向けに実写作品をつくることにしました」(トッド)


12月28日に公開され、人気を博している初のインタラクティブ実写作品『ブラックミラー:バンダースナッチ』

どのコンテンツをインタラクティブにするのか──数ある作品の中、白羽の矢が立ったのがネットフリックスでも人気のオリジナルシリーズ『ブラックミラー』だった。

トッドがブラックミラーのクリエイターであるチャーリー・ブルッカーに話を持ちかけ、制作がスタートしていった。どのような選択肢があるべきなのか、何分おきに選択肢を出すべきなのか。全くの未知数であったが、制作を進めていき、12月28日公開した。

どれくらいの反応が得られるのか全員が分からなかったが蓋を開けてみたら、世界中で大ヒット。多くの人がインタラクティブ作品を視聴し、新しいコンテンツの形を体感した。

「我々は『ハウス・オブ・カード 野望の階段』を公開した2012年当時、インターネット時代のエンターテインメントのあり方について、テッド・サランドス(コンテンツ最高責任者)やシンディ・ホランド(オリジナル・コンテンツ部門の部長)など8人くらいで部屋に集まり、話し合いをしていました。エピソードは1週間ずつに公開するべきなのか、と。当時、1エピソードずつ観るのが当たり前の習慣になっていましたが、メンバーが求めるものに立ち返り、全エピソードを一斉配信するスタイルを採用した結果、“イッキ見”の現象が生まれるほど成功を収めています」(トッド)

従来のテレビにみられるような制限がないからこそ、全エピソードを一気に配信したり、各エピソードの長さが異なったり。そしてインタラクティブ作品のような新しいコンテンツのあり方も模索していける。こうした多様性があるからこそ、メンバーはネットフリックスに価値を感じ、継続して使ってもらえるようになる。


デヴィッド・フィンチャーとティム・ミラーが制作に携わった大人のアニメを集めた短編アンソロジー『Love, Death & Robots』。

例えば先日公開され、いま話題を集めている大人のアニメを集めた短編アンソロジー『Love, Death & Robots』(全18話)からも、ネットフリックスが「多様性」を重視することが伝わってくる。さまざまな作風のコンテンツがあり、各エピソードの長さも短いもので6分、長いもので17分と異なる。

「すべてのエピソードが万人に好かれるものだとは思っていません。いくつかのエピソードしか好きではない人もいるでしょう。でも、それでいいんです。多様性のある優れたコンテンツを用意し、気に入ったものを観てもらう。これがインターネット時代のエンターテインメントのあり方だと思っています」(トッド)



クリエイターのマット・レイゼルのインスタグラムで公開された『The Adventures of Kitty & Orc(原題)』から誕生した、インタラクティブアニメ作品『Battle Kitty』。主人公のバトルキティが100匹のモンスターと戦っていく物語。

インタラクティブ作品に関しては、4月10日に第二弾の実写作品『You vs Wild』の公開が決まっているほか、アニメ作品『Battle Kitty』の公開も予定されている。彼らの話を聞く限り、今後のエンターテインメント業界を読み解く鍵は「多様性」にありそうだ。

後編では、オリジナルコンテンツ VPを務めるシンディ・ホランド、コンテンツ・アクイジション(アニメ)ディレクターを務める沖浦泰斗、インターナショナル・オリジナル VPを務めるベラ・バジャリア、オリジナル・フィルム VPを務めるスコット・スチューバーのエグゼクティブ4名が登壇したパネルディスカッションの内容をお届けする。

写真=ネットフリックス提供

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