また、配車サービスを行う企業の合併・買収としても、これまでで最大の規模になるとみられる。買収手続きの完了は、2020年初めとなる見通し。
買収により、ウーバーはカリームがエジプトやヨルダン、パキスタン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)で手掛けるデリバリー事業と決済事業も傘下に収める。中国市場から撤退し、昨年3月には東南アジアでの事業をシンガポールのGrab(グラブ)に売却したウーバーは、成長のための新たな道を模索していた。
カリームの狙い
カリームは日常生活に欠かせないアプリを提供する企業に進化していくとの方針を明確に打ち出し、注目を集めていた。ここ数カ月の間に、域内の新たな市場に進出。配車サービス用に構築した既存のインフラを活用し、食料品のオンライン販売・配達サービスを開始した。今後は対象を食料品以外にも拡大していく計画だ。
同社はまた、顧客向けにP2P(ピア・ツー・ピア)、クローズドループ、プリペイドによるクレジットトランスファー(口座振込)サービスも行っている。同一のアプリで異なるサービスを提供できることで得られる相乗効果を活用し、さらなる業務の効率化と顧客体験の向上を図りたい考えだ。
カリームは、業界内では「スーパーアプリ」とも呼ばれるアプリの提供を目指している。スーパーアプリとは中国のWeChat(微信)のように、単一のプラットフォーム上で消費者がさまざまなサービスを利用できるモバイルアプリケーションのことだ。
配車アプリからスタートし、その他のサービスにも事業を広げたグラブやインドネシアのGo-Jek(ゴジェック)など、アジアで最初に登場したこのようなアプリは、企業が既存のインフラを利用して新たな収益源を生み出すと同時に、顧客エンゲージメントの強化も実現できるという考えに基づいている。
カリームの場合、既存のインフラを活用し、1億5000万ドルを投資して食品デリバリー・サービス「Careem Now(カリーム・ナウ)」のプラットフォームを構築。ドバイとサウジアラビアのジッダでサービスを開始した。同社の既存の顧客およそ3300万人は新サービスを利用する際、ログインや支払い、住所などの情報を自動入力させることができる。
配達サービスの重要性は高まる一方だ。小売業者や食品サービス業者の多くにとって、デリバリーのための独自のネットワークを構築するか、第三者のサービスを利用するかは戦略上の重大な問題になっている。
カリームがこれに関して従来の小売業者より有利な立場にある理由の一つには、同社が配車サービスのための地図を開発・利用してきたことがある。ただ、同社は地元企業やウーバーとの競争にさらされていた。
ウーバーとカリームは合併後も独立したブランドとして、域内でそれぞれのサービスを行う。つまり、カリームは今後も、スーパーアプリの提供に向けた戦略を維持していくことになると考えられる。