このプロジェクトは、米国で初のドローンによる商用定期配送となる。今回の取り組みは人口密集地域での、ドローン配送の実用化に向けた連邦レベルの試験プログラムの一貫だ。
MatternetのドローンはWakeMed病院の医学的試料を、分析を行うラボに運搬する。同社によると、これまで最大30分かけて人間が輸送していたサンプルの運搬が、ドローンを用いれば3分で可能になるという。
UPSとMatternetはドローン輸送により、医療機関のコストを削減し迅速な運搬を可能にしようとしている。UPSのヘルスケア戦略部門を統括するChris Cassidyは「このスキームにより、全ての病院が敷地内にラボを置く必要がなくなる。9マイル離れた場所にあるラボで、複数の病院の検査が可能になる」と述べた。
プロジェクトの初期段階では、ドローンは人間が目視可能なエリア限定で飛行するが、UPSとMatternetは今後、米連邦航空局の認可を受け、さらに長距離の輸送を実現したい意向だ。
MatternetのCEOのAndreas Raptopoulosは「商用輸送サービスを実現するためには、ドローンをリモートで制御しつつ、自律飛行させることが必要だ」と述べた。
カリフォルニア州メンロパーク本拠のMatternetは、2017年からスイス政府の郵便事業会社とパートナーシップを結び、医学的試料の運搬試験を重ねてきた。同社はスイスのチューリッヒなどの都市で、3000回以上の試験飛行を完了している。
UPSはヘルスケア分野でのドローン輸送の商用化を目指し、Matternetと事業化に向けた取り組みを進めてきた。UPSは医療機関向けの、温度管理された倉庫をつなぐネットワークの構築を進めており、患者の自宅に医薬品を届けるサービスの実現を視野に入れている。
FAAは2017年から、UAS Integration(UASは無人航空機システムの略)と呼ばれる試験プログラムを進めており、そこに参加するMatternetとUPSは、サンディエゴなどの都市でも同様な医療機関向けの輸送実験を行っている。
Matternetは2020年には、このサービスの全米展開を可能にする、新たな法制度が導入されることを期待している。
「このサービスをスケールさせ、米国のヘルスケア分野に役立つサービスを実現したい」とMatternetのRaptopoulosは述べた。
Matternetは今後、薬局チェーンとパートナーシップを結び、ドローンを用いた医薬品の配送を実現することも視野に入れている。「今後もヘルスケア分野での、ドローン配送の実用化に向けた努力を重ねていきたい」とRaptopoulosは続けた。