女性には共感してもらえるかもしれませんが、化粧品を使い切ることって、なかなか稀なことです。その稀が実現すると、お気に入りを使い切って同じものを何度も購入するリピート買い、いわゆる「リピ買い」になります。
とはいえ、その座につくコスメはひと握りで、それ以外は「途中で飽きた」「色が合わず使わなくなった」「他のコスメを使っているうちに古くなった」など多種多様な理由で、放置されたり捨てられる運命にあるのが実情です。
小さくて可愛い、便利という点に加えて、「使い切らないことも多いし、もったいない」という潜在的な女子の気持ちに寄り添っていることが、このミニコスメブームの裏にあると私は思います。
バレンシアガがミニ財布ブームに火をつけた
「ミニ」は、いま、女子の心をくすぐるキーワードなのかもしれません。2017年頃から続くミニ財布ブームとミニコスメブームの関係を考えてみましょう。
ミニ財布ブームの火付け役となったのは、バレンシアガの3つ折りのミニ財布でした。財布がコンパクトになることで荷物を減らすことができ、身軽になれ、スマート。かつ、ミニ財布は容量が小さいゆえ、否が応でも不要なレシートやカードをこまめに断捨離する必要があります。
ミニコスメとミニ財布に共通するのが、高級ブランドが先陣を切ってブームを盛り上げた点です。これまでのミニコスメは、プチプラブランドのものが多かった印象ですが、最近は、若年層顧客の増加を狙ってか、SHISEIDOなど高価格帯ブランドからの進出が際立っています。
2018年に数量限定で展開されたミニサイズのコスメシリーズ「SHISEIDO ピコ」は、4mlのネイルカラーと6cmのリップがSNSで話題となり、ほとんどの商品が完売。しかも購入者の大半が新規で、うち半数が10代〜20代とも言われています。
資生堂 ネイルエナメル ピコ(c)資生堂
キャッシュレス化で「ミニ」ブーム加速
ミニ財布ブームも同様。前述のバレンシアガを筆頭に、サンローランやルイ・ヴィトン、グッチなど高級ブランドが、2018年にかけて続々とミニ財布を発売し、おしゃれかつトレンドであるイメージがつくられたことで、ブームをさらに加速した印象です。
物理的な小ささから、例えばブランドの中でも比較的手頃な価格となるため、購入のハードルが下がり、高級ブランドを手に取るきっかけにもなりやすい。それまで、そのブランドの購入に至らなかった人たちにもアプローチする機会となったほか、お手頃ゆえ、ギフトとして選ばれやすかったのも理由のひとつとして考えられます。
昨年末100億円キャンペーンで話題を集めたPayPayのようなキャッシュレス決済の普及は、ミニ財布はもちろん、ミニバッグ、ミニポーチ、そしてミニコスメの普及に繋がり、「ミニ」化を加速させることでしょう。
これからの時代は、「大は小を兼ねる」ではなく、「小よく大を制す」かもしれません。行動も思考も身軽になった女子たちから生まれる、これまでの枠にとらわれない新たな発想にも期待です。
連載 : 経済を動かす「女子」の秘密
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