ビジネス

2019.03.27

「眠れる巨人」グーグルはブロックチェーンでも覇者になれるのか?

グーグル・クラウド シニア・デベロッパー・アドボケート アレン・デイ


クラウド・コンピューティングに関してグーグルは、アマゾンやマイクロソフトに大きく後れを取っている。18年、グーグルのクラウド関連サービスの収益は30億ドル(約3320億円)と概算される。一方、アマゾンとマイクロソフトは、それぞれ270億ドル(約2兆9900億円)と100億ドル(約1兆1000億円)だった。

デイとしては、ブロックチェーンETL(Extract、Transform、Load)と名付けられた自身のプロジェクトが、公平な競争を促すことを期待している。しかしここでもグーグルは、まだ前を追いかけている状況だ。

アマゾンは18年、分散台帳を構築・管理する一連のツールと共に、大々的にブロックチェーンに参入した。それに先立つ15年、マイクロソフトはイーサリアムのブロックチェーン向けツールをリリース。アマゾンとマイクロソフトがブロックチェーン向けアプリ構築の簡素化を目指す一方で、デイは、ブロックチェーンの本当の使われ方や実際の利用者を明らかにすることに注力している。

「将来的に、チェーン上でより活発に経済活動を行う際に必要とされるのは、コンセンサス・レベルの信頼関係だけではない。自分が実際にやり取りしている相手について知る方法に、一定の信頼を置けなければならないだろう」と、ブロックチェーン・テクノロジーの中核にある認証メカニズムを念頭に、デイは指摘する。つまりブロックチェーンが主流となるには、特徴のひとつである匿名性をある程度放棄せざるを得ないのだ。

デイとメドヴェージェフが開発したツールがリリースされるまでは、ブロックチェーンの単なる検索にも、“ブロック・エクスプローラー”と呼ばれる専用のソフトウェアが必要だった。同ソフトウェアでは、26文字以上の固有の英数字が割り振られた特定のトランザクションのみを探し出すことしかできない。対照的にグーグルのブロックチェーンETLは、より総括的な検索を可能とする。

「現実を定量的に示すことにとても関心がある。ブロックチェーンへの合理的な適用事例を示せるから」とデイは言う。「そして次の適用事例へと進み、これらテクノロジーが本当に役に立つ何かを作り出す」

眠れる巨人が今、目を覚まそうとしている。


アレン・デイ◎オレゴン大学で生物学と中国語の2つの学位、UCLAで人類遺伝学の博士号を取得。2016年グーグルのヘルス・バイオインフォマティクス部門に採用される。

文=マイケル・デル・カスティリオ 写真=ムンシ・アハメド 翻訳=荒川伸次

この記事は 「Forbes JAPAN 地方から生まれる「アウトサイダー経済」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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