米国で横行する学習障害偽装 大学入試制度の問題点

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米国で先日発覚した大学裏口入学スキャンダルでは、首謀者のウィリアム・シンガーがさまざまなテクニックを使って顧客の子どもらの志望校進学を支援していた。こうしたテクニックの中には、写真を加工して子どもの顔をアスリートの体に貼り付けるといった大胆なものもある一方で、あまり目立たなく、特段に新しくない手口もあった。

法廷文書によると、シンガーはある父親に対し、追加の試験時間を確保するため、娘に心理検査で「頭が悪い」ふりをさせるよう指示していた。学習障害を装うことは、昔からよく行われていた手口だ。学習障害がある子どもは、大学進学適性試験で追加の解答時間を与えられる。

進学支援サイトのステューデント・チューター(Student-Tutor)は10年以上前に「重要なテストでは、時間のメリットを手に入れよう」とうたった記事を掲載している。子どもに学習障害がある場合、試験時間を1.5~2倍に延長できる。それにより、大学進学適性試験の点数は1600点中350点も改善すると同サイトは述べている。

大学進学適性試験の準備プログラムを提供するグリーン・テスト・プレップ(Green Test Prep)は、学習障害を理由として重要なテストで追加の解答時間を確保する方法を詳細に説明している。同サイトでは、子どもに実際こうした障害がないのに追加の解答時間を確保しようとすることは「軽蔑すべき行為」と述べているが、一方で「子どものためにメリットをできる限り多く確保することは、親としての義務だ」とも述べている。

これはよくある慣習なのだろうか? 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは昨年、米エリート大学では学生の25%が障害者と分類されていると報じている。また米誌ハリウッド・リポーターによると、米連邦捜査局(FBI)が今回の事件での起訴を公表する数週間前、ロサンゼルスの進学校ハーバード・ウエストレーク・スクールの生徒ジェッサ・グラスマンは、学習障害を装う行為の横行について書いた記事を学校新聞に寄稿していた。

米国の私立校では、米名門大学群「アイビーリーグ」に入らなければならないというプレッシャーが生徒と家族の両方に重くのしかかっている。こうした激しい競争のせいで、私のクラスメートの多くは、試験時間の延長が認められる障害の診断を期待し、専門医の診察を受けていた。
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編集=遠藤宗生

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