米国で横行する学習障害偽装 大学入試制度の問題点

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米国の私立高校では、生徒の最大46%が試験時間の延長を認められているが、米国立学習障害センターによると学習障害があるのは総人口のわずか5%だ。学習リソース専門家のグレース・ブラウンによると、私の学校で試験時間を延長した生徒は11%前後だ。これは私立校の全国平均より低いものの、本当は学習障害のない生徒の多くが学習障害だと偽り、解答時間を稼いでいることが示されている。

学習障害のある生徒を支援する人々は、今回の事件により学習障害のある生徒への特別待遇が制限されるようになり、試験時間の延長を真に必要としている生徒にとって入試が厳しいものになるのではないかと危惧している。

しかし、そもそもなぜ時間が重要なのだろう? 生徒が問題に正しく解答できるのであれば、解答に何時間かかるかがなぜ問題になるのだろうか?

理由の一つは、標準化されたテストではできる限り多くの不確定要素を制御する必要があることだ。全受験者を同じ時間枠で解答させれば、この不確定要素を制御できる。質問に素早く答えられることは、ツールやスキルを自由に使いこなせる能力があることを示すとみられる。

現実的に論じれば、手術のため体を切開してから「しばらく考えたい」と言うような外科医は望ましくないだろう。また、じっと座って自分の解答をいつまでも見つめていても意味がない生徒もいる。

一方で、テストに制限時間を設けると、真に測定できるものが限られてしまう。ある文学作品を全て読み、その作品に対する知的な批評分析ができるかは、統一試験ではきちんと測れない。また、調査スキルを活用し、特定の主張の正当性を評価する能力(今の世の中で重要性が増しているスキルだ)も、統一試験では測れない。

終了が刻一刻と迫る時間の中で、生徒が持つスキルや知識の活用能力を測れる場合もあるが、全ての学びがこうした方法で測定できるわけではない。統一試験に時間制限を設ける主な目的が、条件を公平にすることであれば、それは現在、うまく機能していないようだ。

編集=遠藤宗生

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