国民の幸福度でインドがパキスタンに負ける理由

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パキスタンは幸福度において、インドを大幅に上回っている。国連の関連団体が先ごろ発表した報告書では、インドが140位、パキスタンが67位だった。調査対象は156カ国・地域であることから、インドは最下位に近い。

最も注目すべき点は、両国間の差が拡大したことだ。2年前のランキングでは、パキスタンは80位、インドは122位だった。これは、両国の株式市場のパフォーマンスとは著しく対照的な結果だ。

国民が幸福であれば大抵、経済は成長して国は栄えることになり、株価も最高値を更新する。だが、これら2カ国には、必ずしもそうした状況にはなっていない。ここ12カ月の動向を見ると、株価はインドで上昇している一方、パキスタンでは下落している。

幸福度のランキングでパキスタンが大きく順位を上げ、インドとの差を大きく広げていることは、新興市場の動向を追ってきた人たちの一部を驚かせたかもしれない。インド経済は競争力やGDPの規模と成長率、インフレ率といった多くの指標で、パキスタンを上回っている。

出所 : Tradingeconomics.com 3/22/19

さらに、インドでは軍事クーデターによって民主主義政権が打倒されたこともない。では、国民の幸福度を追求する上で、パキスタンの何がインドより優れていたのだろうか?

経済的に豊か=幸福ではない

幸福度ランキングは、1人当たりGDP(国内総生産)などの量的データと、社会的支援や人生における選択の自由、腐敗に関する認識といった質的データに基づき作成される。このランキングでインドとパキスタンに無視できない大差がつい理由について、米ロングアイランド大学ポスト校のウダヤン・ロイ教授(経済学)は、次の点を指摘する。

「所得の不平等や貧困など、その他の測定基準が影響していることは間違いない」

「これらは大衆の幸福度において、GDP以上に重要な問題だ」

実際に、インドでは富める者がさらに豊かになり、貧しい者がさらに困窮している。1950年代から2014年までのデータに基づいてまとめられた「世界不平等レポート」によれば、インドでは2014年までの40年間で、上位1%に入る人の所得が国民全体の所得に占める割合が、約7%から22%に増加した。一方、下位50%が占める割合は、1980年代初めの約23%から15%に減少している。

世界所得不平等標準化データベース(SWIID)から導き出されたジニ係数(不平等の程度を測る尺度)によれば、インドの所得格差はパキスタン、バングラデシュと比べてはるかに大きい。さらに、世界銀行によると、インドは貧困率もパキスタンやバングラデシュより高い。

また、インドはこれら2カ国より、弱い立場に置かれる雇用(家庭内での無償労働)に従事する人がかなり多くなっている。それだけではない。経済的自由の問題もある。

186カ国・地域の貿易やビジネス、投資の自由度、財産権保護のレベルなどを評価する米シンクタンク、ヘリテージ財団が発表する「経済自由度指数」では、パキスタンの順位が一貫してインドを上回っている(ただ、過去数年間の順位に大差はない)。このランキングでは特に、社会保障制度に多大な影響を及ぼす政府支出において、パキスタンのスコアが高い。

要するに、パキスタンは大衆の間に富を広めることおいて、インドをリードしているということだ。経済指標では、パキスタンがインドに追いつくまでにはまだ長い時間がかかる。それでも、国民の幸福を追求する中で富を創造して消費する方法に関しては、パキスタンの戦略が違いを生み出し始めているということだ。

編集 = 木内涼子

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