中国の元五輪選手が創業のスポーツウェアLI-NING、株価急落のワケ

(Photo by Bryan Bedder/Getty Images)

中国のスポーツウェアブランド「LI-NING(リーニン)」の株主らは、先週末、同社株の値上がりに気を良くしていた。LI-NINGの株価は香港市場で3月22日、約8年ぶりの高値の12.70香港ドルをつけていた。

しかし、25日の市場でLI-NINGの株価は大きく下落した。これは、創業者の李寧(Li-Ning)が支配する企業が、LI-NING株を大量に放出すると発表したからだ。李は彼が運営するViva Chinaが、1億4800万株(全体の6.8%に相当)のLI-NING株を一株11.72香港ドルで売却するとアナウンスした。その結果、Li Ningの株価は8.3%の下落となった。

李は体操選手として1984年のロサンゼルス五輪で活躍した後、1990年にスポーツシューズメーカーのLi Ningを創業し、香港市場に上場させた。2008年の北京オリンピックで、李は聖火リレーの最終ランナーとなり、聖火台の最終点火者を務めて注目された。

その後、事業を拡大させた李は2010年のフォーブスの中国のビリオネアリストに、資産額11.5億ドルで登場していた。

しかし、その後は厳しい時代が続いた。業績の不振からLi Ningの株価は2010年の初旬から、2014年末までに90%下落し、3香港ドル以下になった。

近年の業績回復は、同社がニューヨークのファッションショーなど、海外で高い評価を獲得したことによる。Li Ningは3月22日、2018年の売上が前年比18%増の105億元(約1700億円)に達し、営業利益は同39%増の7億1500万元に伸びたとアナウンスした。

しかし、Li Ningは中国の競合であるANTA(安踏)と比べると、グローバルでの認知度はかなり低い。Li Ningの時価総額は3月22日時点で約36億ドルだったが、これはANTAの5分の1ほどのボリュームだ。

ANTAはフィンランドの「アメアスポーツ」を52億ドル(約5700億円)で買収する動きを進めており、アメアスポーツは、テニスラケットの「ウイルソン」やハイキングシューズ「サロモン」などを保有している。

ANTAはテンセントやFountainVest Partners、米国のビリオネアのチップ・ウィルソンらの出資を受けている。チップ・ウィルソンはヨガウェア・ファッションブランドの「Lululemon(ルルレモン)」創業者として知られる。

中国では2022年の北京冬季オリンピックの開催を控え、ウィンタースポーツへの関心が高まっている。しかし、李寧がLi Ningの株式を売却した背景には、今後の業績見通しについての懸念があるものと推測される。

編集=上田裕資

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