ビジネス

2019.03.26

「点と点がつながる喜び」SXSWファイナリスト「Stroly」が世界で見た課題

Stroly代表取締役社長 高橋真知


起業家として「わくわく」するのはどんな時ですか?

(ピッチを終えて一夜明けて)ベッドの上で「昨日の私は、今日のためにいた」と思いました(笑)。起業家として、ゼロからイチをつくり、それをさらに軌道に乗せていくには、本当に何が何につながるか分からないな、と。

自分では直観的に「これだ!」と思ってやったことが、すぐにではないにしろ、どこかでチャンスにつながったり、2~3年後に効いてきたりする。点と点がつながり、「あの時こうしたから、今の自分たちがいるんだ」と思うと、本当にワクワクします。やっている時点では分からないし、ロジカルに見えないことが難点ですが(笑)。

今回のオースティンでも、色々なファイナリスト向けのミーティングの機会を主催者に作っていただき、アメリカの投資家からもたくさんのアドバイスや励ましをもらいました。何かにつながると良いと思っています。

自身の起業家としてのパッションのルーツは、どこにあると思いますか?

父親が外資系の船会社に勤めていて、子どもの頃から世界の色々な場所に連れて行ってもらいました。母親は新卒で日銀に入ったのですが、結婚して辞めて専業主婦になりました。しかし、父がインドネシアに赴任している間に、大阪の商店街で、自らファンシーショップを開業し、それが信じられないほど成功したんです。

その頃小学校の低学年だったのですが、お店の子として、コーヒー牛乳はつけ払いで飲むなど、商店街で可愛がってもらいました。商売というのがとても身近だったと思います。その後、家族でNYに行ったのですが、その頃のNYは治安が悪く、そこでは「油断したら死ぬぞ」というサバイバル感覚が身につきました。

また、アメリカから帰ってきて就職したジャストシステムや、ATR(国際電気通信基礎技術研究所)で先輩方の姿を見て、イチからみんなで一所懸命開発したプロダクトを、売るところまで持っていくのことが、とても楽しい、と感じました。アイデアが生まれるところが最も面白いのですが、それが実現して人に使われるところまで見ることができるのは無上の喜びです。

よく「イノベーション」という言葉を使うときに、ゼロイチではなく、スケールや海外からのビジネスモデルの移管を指している場合もあるのですが、私は「インベンション(発明)」も欠かせないと思っています。

リーダーシップとして大切にしていることは?

ジャストシステムの創業者(浮川和宣・浮子夫妻)から学んだのは、「いつも明るくいる」こと。そしていつまでも自分たちのプロダクトにわくわくしていることです。

ATR時代の畚野(ふごの)信義社長はNASAの研究所で熱帯雨林観測用の衛星の開発に携わった経験を持つ人でした。彼から学んだのは「常に宇宙から地球を見る」、大きなことも細かなことも、とにかく俯瞰で見なければならない、ということでした。

彼に社長になることを勧められたのですが、その時に言われたのは、「度胸がある人は多いが、度量がある人は少ないので、度量を身に付けなさい」ということでした。人を認める、人を信じて任せる、そういった度量のある社長であることを心がけています。


高橋真知◎Stroly代表取締役社長、共同CEO。大阪府出身、米国Carleton College美術学部卒。ジャストシステム、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)を経て、2007年にATR-Robotics代表取締役社長に就任。2016年のMBOを経て、Strolyに社名変更。第4回京都女性起業家賞(アントレプレナー賞)、近畿経済産業局長賞受賞。

構成=岩坪文子 イラストレーション=Luke Waller

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