800台の限定生産で、価格は5714万3135 円(税抜)。最高速度350km/h超のオープンカーだ。
車名に込められた意味
「アヴェンタドール」といえばV型12気筒エンジンを搭載するランボルギーニのフラッグシップ・モデル。そして「ロードスター」とは(マツダの同名モデルでも分かるように)屋根が開く2人乗りスポーツカーであることを意味する。
ただしアヴェンタドールの場合は電動でルーフが格納されるわけではなく、手動でルーフパネルを取り外し、フロントのボンネット下に収納しなければならない(エンジンはミドシップなので運転席の後方に搭載されている。念のため)。その代わり、重量増を抑えることができるというのがランボルギーニの主張だ。
そして車名のSVJという3文字のうち、"S"はSuper(超)、"V"はVeloce(イタリア語で速い)という意味。既にランボルギーニは2012年に「アヴェンタドール・ロードスター」を、2015年には「アヴェンタドールSVロードスター」を発表している。だから今回、最も重要なのは、新たに付け加えられた"J"の文字ということになる。その意味を説明するためには、時計の針を半世紀前まで戻さなければならない。
当時のランボルギーニは、V12エンジンを初めてフロントではなく運転席の背後に搭載した「ミウラ」というクルマを発売したばかりだった。野心に燃えるランボルギーニの若きエンジニアとテストドライバーは、早速これをベースにレース仕様車の製作を始める。
J=イオタ
国際自動車連盟の競技規則付則J項で定められた車両規定に合わせて製作されたそのクルマは、ランボルギーニ社内で「J」と呼ばれた。もっとも、現代イタリア語のアルファベットに「J」の文字はないので、その起源となったギリシャ語の「I」と同じ「イオタ」と発音されることが多かったという。
高性能スポーツカーを作る自動車メーカーは、それでレースに出場し、勝つことで名声を得る(=商品価値を上げる)のがセオリーだ。そんなスポーツカー・メーカーの代表格であるフェラーリに対抗して設立されたはずのランボルギーニだが、創業者のフェルッチオ・ランボルギーニはどういうわけか、社によるレース活動を一切許可しなかった。
結局、Jは一度もレースに出場することなく、その開発で得られたデータやアイデアはミウラの改良に役立てられることになる。
役目を終えたJはある顧客の手に渡り、後に事故によって焼失してしまうのだが、その存在を知った他の顧客たちから、Jのようなミウラが欲しいという要望がランボルギーニに数多く寄せられる。これに応える形で、ランボルギーニの工場では外観をJに似せたミウラが何台か製造された。
この頃、ミウラは初期モデルの「P400」から、性能が向上した「P400S」を経て、さらに改良版の「P400SV」に進化していたため、J仕様のミウラはこの「SV」に「J」を加えて「SVJ」(上の写真)と呼ばれるようになる。