かつて紛争地域として知られたカンボジア経済は近年、ベトナムよりも安い労働賃金に後押しされ、拡大を続けている。2012年頃までは、カンボジアは物流インフラが未整備で投資先としての魅力を欠いていたが、中国がインフラ整備を行った結果、その地位は大きく向上した。
「10年前のカンボジアには物流のインフラが乏しく、製造業の投資先としての魅了が少なかった。しかし、今では安い労働コストと整備されたインフラを備えた国に成長した」と、オーストラリアのディーキン大学のStuart Orr教授は述べている。
台湾政府のデータでは、台湾企業のベトナム向けの投資額は、過去6年で累計約5億6800万ドルに及び、その大半が直近の2年間のものだという。台湾企業のベトナム向け出資額は2017年に約1億7100万ドルで、2018年には史上最高額の1億8100万ドル(約200億円)に達した。
カンボジアでは1970年代のポル・ポト政権による虐殺で、200万人以上の人々が命を失い、数十年に渡り過酷な状況が続いた。その後、中国がカンボジアのインフラ整備を行い、2018年時点で中国のカンボジア向け投資額は20億ドルに達していた。
カンボジアの道路インフラの整備資金の70%は、中国の投資によるものだ。中国の習近平国家主席は先月、「一帯一路構想」の実現に向けて、今後さらにカンボジア向けの投資を加速させていくべきだと述べた。
カンボジアは特に、アパレル分野の製造拠点としての魅力を高めている。アディダス製品のOEM受注で業績を伸ばした台湾の縫製会社、「グランド・ツインズ・インターナショナル」は2014年にカンボジア証券取引所へ上場を果たした。同社はカンボジア市場で上場を行った2社目の海外企業であり、今後の同国の市場の成長に自信を抱いている。
カンボジアでは台湾のスポーツウェアメーカーの「SHEICOグループ」も活発な投資を行っている。同社はカンボジア国内で2カ所の工場を稼働させ、約4800人を雇用している。
SHEICOの工場の一つはベトナムとの国境近くにあり、国際貿易のハブであるホーチミン経由で材料を輸入し、製品を送り出している。同社のもう一つの工場は、プノンペン国際空港に隣接している。
カンボジアの政府高官らは、中国の国家開発銀行らと共同で150万ドルの資金を投じて、2600ヘクタールの物流拠点を開設しようとしている。「ベトナムのアパレル工場に近いエリアに工場を新設することで、今後のさらなる成長が期待できる」と、プロジェクトチームは述べている。