大胆な決断と行動でFCAを救った天才 セルジオ・マルキオンネ

2018年のジュネーブ・モーターショーをセーター姿で見守るセルジオ・マリキオンネ全FCA社長


今回ジュネーブで会ったFCAの関係者の話だと、マルキオンネ氏が特に気を使ったのは、日本でも大人気のジープの次世代モデルの開発だった。ジープは、第二次世界大戦前からあるアメリカの象徴的な存在で、失敗は許されない。その結果、外観を上品に化粧し直し、走り、性能と安全面を高めた新バージョンが、昨年11年ぶりに登場した。
 
マルキオンネ氏は、FCAのみならず「イタリア経済の救世主」と呼ばれてもいいぐらいだ、とイタリアの同僚がいう。そういうわけで、全世界の自動車を評価し、その最優秀賞を決める団体「ワールド・カー・アワード」の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」の候補者を挙げる際に、マリキオンネ氏の名前が上がった。

そして昨年末、25か国の85名の選考委員が投票した結果、マルキオンネ氏が一番高く評価され、めでたく「パーソン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。
 
私は同団体の会長として、3月のジュネーブ・モーターショー会場で、マリキオンネ氏の後継であるFCAのマイケル・マンレー社長と会い、トロフィを手渡した。「彼は非常に際立ったビジネスセンスとビジョンを持った方でした。今のFCAが業界でこのポジションにあるのは、セルジオのおかげです」とマンレー社長は語った。


ジュネーブ会場で、FCAのマンレー社長に、マルキオンネ前社長のトロフィを贈呈

彼は、フィアットを救済し、クライスラーを破産から救済して、FCAグループまで結成し、昨年は470万台という記録的な販売台数を達成した。このような人物は、もう二度と現れないかも知れない。イタリア人として、またカナダ人として彼は賞賛され続けるだろう。

自動車業界に関わる人間として、セルジオ・マルキオンネ氏に深い哀悼の意を表する。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
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文=ピーター ライオン

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