フィアット・クラスラー・オートモービルズ(以下FCA)およびフェラーリのトップを務めた故セルジオ・マルキオンネCEO。彼は昨年7月、肩の手術のためにチューリッヒで入院。退院するも、急に状態が悪化し、7月25日にスイスで亡くなり、世界に衝撃を与えた。
今回はこの大物の人生を通じて、FCAの変遷を辿っていこうと思う。FCAは、その名前にはフィアットとクライスラーしか含まれないが、具体的にはフィアット、クライスラー、ジープ、ダッジ、ラム、マセラティ、ランチア、アバルト、そしてアルファロメオを販売する巨大なグループだ。
そのトップ、マルキオンネ氏は、大胆な決断と行動で有名だった。オバマ大統領にも面会する時にも、スーツよりセーター姿。そして2009年、破産しかけていたクライスラー社に資本参加した。当時はフィアット再建の途中で、イタリアでは「フィアットの終わりの始まり」とまで言われた。結果として、2014年にクライスラーへの出資比率を100%にまで上げ、同年10月にFCAを結成した。
フィアットとクラスラーをそれぞれ再生させ、合併させたことでよく知られているが、アメリカで一番喜ばれているのは、「4C」という車種でアルファロメオをアメリカ市場に20年ぶりに復帰させたことだ。
少し値段が高めのスポーツカーなので、一般人のハートにはそれほど訴えなかったが、2017年に登場した同ブランド初のSUV「ステルヴィオ」はすぐさまヒットし、2018年には販売台数4万台を超えるアルファロメオのNo.1モデルに浮上した。今年のジュネーブ・モーターショーでは同ブランド初のSUVハイブリッド「トナーレ」を発表しているが、これもマルキオンネ氏が企画を通した。
アルファロメオ・トナーレ
一方レースの世界でも、同氏はアルファロメオをF1に復帰させたことで話題となり、また、フェラーリーも彼の決断で2013年に別会社化し、ニューヨークで上場した。
昨年のジュネーブ・モーターショーでは、フェラーリの新車種の488ピスタが発表された時、ステージの後ろでセーター姿のマリキオンネ氏が数十人のスタッフに囲まれていた。まるで「しっかりやってよ」と言っているかのような、あの姿が忘れられない。