「映える」かどうか自動で判断 画像の評価もAIで

Lena Noir / shutterstock

料理が出てきたら、食べることは後回しに、撮影してSNSに投稿する──。社会に浸透しているこの行為は、今後どう変化していくだろうか?

3月某日、渋谷で開催された「料理xテック」のイベントで、料理写真共有サービス「SnapDish」を運営するヴァズの事業開発マネージャー、阿部樹氏に、興味深い話を聞くことができた。

同社では最近、撮影した写真をAIで解析することで、SNSに投稿する前にオーディエンスの反応を予測できる「AI料理カメラアプリ」をリリースした。いわゆる“バエ”(映え)をAIが解析してくれるツールとなるが、阿部氏は「まだ競合はいないのではないか」と状況を説明する。

ヴァズでは、料理写真にどれくらい良い反応が集まるか、撮影時点では分からないという点に着目。それを可視化することで、撮影にかかる時間を短縮したり、料理の写真を共有する楽しみをより深く感じてもらったりすることを目標に掲げる。

予測に利用されるのは、これまで蓄積された2000万点以上の料理写真と、それらについたコメントや「いいね」などのリアクションデータだ。ユーザーが写真を撮影すると、ディープラーニングなどを用いたAIが、色合いや明るさ、構図などからリアクションされやすさ紐づけて判断するという仕組みになっている。

「技術的には、ユーザー投稿写真やリアクションを教師データとして機械学習し、そのモデルをアプリに搭載することでリアルタイム判定しています。特に家庭料理という専門領域に特化したデータを蓄積してきた結果、手料理に関する認識技術は高まっていると自負しています。例えば、単に料理と非料理を見分けるだけでなく、料理がどれくらい『美味しそう!』と思ってもらえそうかなどを認識することができます」(阿部)

ここ数年、画像に写った対象が何かを識別する用途で画像認識技術の向上が進んできたが、今後は、その写真が「バエる」もしくは「バズる」かを事前に判断するという用途でも、人工知能の発展が進んでいくのかもしれない。

そこには、ひとつ転換点があるような気もする。すなわち、モノゴトの良し悪しなどの価値判断やSNS上のコミュニケーションの一部まで、人工知能が担っていくということだ。

今後さらに開発が続きそうな“バエ判断AI”は、個人レベルにとどまらず、ビジネスシーンにおけるマーケティングツールとして利活用していける可能性が充分にある。飲食店にとどまらず、SNSで写真を発信しうるあらゆる産業に応用していけるはずだ。

アートや趣味としての写真の評価はまた別となるだろうが、「SNSに投稿する写真=共有・共感されるための写真」を撮影するセンスをAIが磨いてくれるようになる日は意外と近いのかもしれない。

連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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