果たして日本でも「ミールプレップ」は定着するのか?
今後ミールプレップが定着するかは、日本のライフスタイルに適応できるかがカギとなるだろう。普及のネックになりそうな懸念点としてまず考えられるのが、弁当箱と冷凍庫の問題。冷凍・解凍するために耐熱容器が10個以上必要となるし、冷凍庫内に1度に10個以上のお弁当箱やタッパーなどを入れておくスペースを確保しなければならない。1人分ではなく2人分となったら、さらに倍の弁当箱と冷凍庫スペースが必須となる。それだけの容量がある冷蔵庫は、家庭用ではなかなかお目にかかれない。
また、ミールプレップを作るために毎週、貴重な週末の何時間かが奪われることを敬遠する人もいるだろうし、解凍後の味の劣化や、毎食同じメニューで食べ飽きる可能性もある。ミールプレップを継続するためには、相当な根気が求められそうだ。
さらに、磯村氏は危惧する点として、「解凍の質」を挙げる。
「例えば、レタスなどの葉物野菜はそのまま冷凍保存してしまうと”冷凍やけ”になり、解凍した際に美味しい状態とはなりません。また、1つの容器にすべてを詰めるので、食材の大きさや固さなどの“解凍ムラ”、さらに調理の際のきちんとした加熱、冷凍庫の温度管理などによっては、菌の繁殖なども気になるところです」。
食材の向き不向き、加熱・保存方法など、1週間先を見越したレシピや調理テクもミールプレップに挑戦する上で必要と言えるだろう。
では、ミールプレップをうまく生活に取り入れるには?
「ごはん、メインのおかず、野菜のおかずをそれぞれ分けて冷凍し、持って行くことをオススメします。たとえば、時間が不規則で夕食が遅くなる場合は、1. 早い時間(例 / 19時)にごはんだけを解凍して食べる 2. その後(例 / 21時)おかず系を食べる、という「分食」スタイルが実践できます。分食をすることで、必要なエネルギーは確保しつつ、体に溜めにくい食事法となります」(磯村氏)
ミールプレップのメリットは、長期的視野で食事のバランスが整えられること。半日料理すれば、1週間の食事の調理時間がレンチンのみで済む手軽さも魅力的だ。食材も週イチで買えばいいので余らせたり腐らせることもなく、食費の軽減につながる。ダイエットだけではなく、時短・節約にもなる。
最近ではミールプレップ専用容器の販売や、デリバリーサービス、ミールプレップのアドバイザーの資格など、日本でも広がる要素が見え始めている。
そもそも脂質や炭水化物中心の食生活をする北米の人だったら、食事のバランスを考えるだけで痩せるのでは? という基本的な疑問はさておき、果たしてミールプレップは日本のダイエットブームに革命を起こすのか? 今後のなりゆきを楽しみにしたい。
磯村優貴恵(いそむらゆきえ)◎管理栄養士、料理家、フードコーディネーター、健康・食育ジュニアマスター、薬膳インストラクター、幼児食アドバイザー、学童食アドバイザー。大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。最近の著書は「簡単! おいしい! いわし缶レシピ」(河出書房新社)