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2019.03.20 11:30

「日本で最も新製品が生まれる場所へ」──Makuakeがメーカーの製品開発を全力で支援するワケ

マクアケ代表取締役社長 中山亮太郎

マクアケ代表取締役社長 中山亮太郎

「実は、クラウドファンディングサービスをあまり競合としては捉えていないんです」

クラウドファンディングサービス「Makuake」を運営するマクアケ代表取締役社長の中山亮太郎に競合を聞くと、返ってきたのは意外な答えだった。この発言の真意に触れる前に、まずはMakuakeの近年の取り組みを紹介しよう。

少し前まで新たな現象として取り上げられていた「クラウドファンディング」は、ここ数年で一気に当たり前の存在になった。「お金の価値観」のアップデートを掲げた家入一真が率いる「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」やNPOなどへの寄付に強い「Readyfor(レディフォー)など、すでにたくさんのサービスが存在感を示している。

そんな中でMakuakeは、新製品や新サービス、新店舗等を生み出すため、そして価値あるものを広げ、残すためのクラウドファンディングサービスだ。しかし、近年は「個」の取り組みを応援する仕組みと思われがちなクラウドファンディングのイメージとは、一見かけ離れた試みが注目を集めている。

企業向けに新製品の開発をサポートするプログラム「Makuake Incubation Studio(マクアケインキュベーションスタジオ、以下MIS)」だ。

製品開発前から、顧客の需要がわかる

MISは企業がもっている技術や知見を製品開発に活用し、販売方法の模索までを支援する製品開発の支援事業。これまでも商品の開発・販売を支援するコンサルタントプログラムはたくさんあったが、クラウドファンディングの運営会社がこれを行うのは初めてだ。

一例を紹介しよう。シャープが酒蔵と共同開発し、氷点下で楽しめる日本酒を手がけたことで話題になった純米吟醸酒「雪どけ酒」冬単衣(ふゆひとえ)は、Makuakeで完売となる1800万円を超える支援を集め、2017年度グッドデザイン賞を受賞したプロジェクト。

コアになったのは、シャープが液晶技術の研究過程で開発した、指定した温度帯を一定に保つ特殊な蓄冷・蓄熱材料だ。この技術をどのようにビジネス化するか悩んでいた同社に対してMISは、カスタマー向け商品を売り出せばBtoBでの協業提案も増えると提案。繊細な温度管理が重要な日本酒とコラボすることで、冬単衣は生まれた。

「個人がアイデアを発信する場」や「寄附の場」として注目されてきたクラウドファンディングだが、製品開発については「テストマーケティングの場」としても大きな力をもっている点も見逃せない。ユーザーからの支援数は、そのまま市場からの需要の高さを測る指標となる。

しかも従来のユーザーアンケートと違い、支援者は実際にお金を出しているためマーケティング指標としても参考になる確率は高い。これは購入者をある程度確保できなければ製品を開発できないほどに元手の少ない個人のクリエイターにはもちろん、大企業社員が野心的な企画案を社内で提案する際のマーケットリサーチとしてもかなり有効だ。

「実際に製品をつくる前から顧客の需要がわかるというのは、我々が想像していた以上に大きな魅力。製品開発にイノベーションをもたらした出来事だと思っています」
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文=野口 直希 写真=小田駿一

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