おままごとの一歩先へ 子どもの金融教育に役立つフリーマーケット

(Ariel Skelley / Getty Images)

筆者の実家の近くにある大きな公園では、定期的にさまざまな催し物が行われている。その中でも最も人気があるのがフリーマーケットなのだが、先日参加した際、子どもたちは色々な発見をしたようだ。

フリーマーケットについて「安くモノが買えてお得」ぐらいにしか考えていなかった筆者よりも、子どもたちの方がはるかに本質を捉えていてショックを受けてしまった。その日の会話から、新たなフリーマーケットの意義を感じ取ったので、今回はその話を共有したいと思う。

おままごとの限界

子どもがまだ保育園や幼稚園に通っている年齢だと、家に兄弟や姉妹がいると自然とおままごとを始めることが多いだろう。我が家でも例外なく毎日のようにおままごとが行われている。

1人がお店役、もう1人がお客さん役となり、スーパーやデパートで見た光景の真似をする。その様子を見ていると、子どもたちは我々親の行動をよく観察しているんだなぁと感心するほどである。このままアルバイトが出来るのではないかと思うほど、レジ打ちの人たちのセリフを完璧に覚えている。

「これをください」とお客さんが言うと、商品の値段設定は根拠がよく分からないが、「◯◯円です」と答え、おもちゃのお金や自作したお札を渡して商品と交換している。そして、しばらくすると役割を交代し、それを延々と繰り返す。

おままごとは金融教育には非常に有用だと考えている。経済学で言われる「通貨の三大機能」のうち、少なくとも「決済機能」については理解できるようになるし、商品の値付けも出来るようになれば「価値尺度機能」についても理解できているということになるからだ。

ただ、おままごとではすでに手元にあるお金と商品の交換しかしないため、損益計算書(P/L)でいうところの売上高の概念しか身に付かないのが残念なところである。

筆者は、金融教育は経済学と会計をベースにすべきだと昔から主張しているのだが、その観点からするともう少し会計を学べる仕組みはないかと日々思考を巡らせている。せめて、売上高とコスト、そして差し引きした利益。この3つの感覚は幼い頃から学ばせたいものだ。

フリーマーケットという新たな収入源

我が家ではお小遣いを毎月2回、現金支給している。子どもからすれば毎月2回の定期収入(お小遣い)とイベントごとの臨時収入(お年玉や祖父母や親戚からもらうお小遣い)しか収入源がないため、資金繰りに頭を悩ませていることも多い。

そんな中、フリーマーケットに立ち寄ったところ、子どもたちはそこで売っている物が新品ではなく、中古品であることを不思議に感じたようだ。なぜなら、通常はお店で新品を買い、使わなくなったり壊れたりしたものは捨ててしまうのが普通だからだ。

フリーマーケットで売られている物を眺めてみると、たしかに多少の使用感はあるものの、全然気にならないレベルのものが多い。「最近のフリーマーケットは昔より質が上がったなぁ」と感心する筆者の横で、子どもたちは「物を買ってお小遣いが減っても、使わなくなったものを捨てずにフリーマーケットで売れば、少しお金が戻ってくる」ということに気づいたようであった。

この気づきは非常に重要だ。これまでのおままごとでは、手元にあるおもちゃのお金と商品を言い値で交換するだけだったが、フリーマーケットでは、使用したものを第三者に売ってお金を得ることができる。そこにはリアルなお金の動きが発生し、少しいびつではあるものの売上高、コスト、利益の概念を身に付ける機会となる。
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文=森永康平

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