しかし、バズフィードによると、米国国土安全保障省は顔認証システムの導入を急ぐあまり、システムの精査や規制面のセーフガードが疎かになっているという。プライバシー擁護派は、国土安全保障省の取り組みは法に反するとして反発を強めている。
バズフィードは、「電子プライバシー情報センター(Electronic Privacy Information Center)」からプロジェクトに関する346ページの資料を入手した。税関・国境警備局が「生体認証出入国管理システム」を構築した場合、1週間当たり1万6300便の乗客に対して顔認証を実施することになる。
資料によると、提携航空会社が顔認証システムのデータを使用する上での制限は何も設けられていないという。税関・国境警備局の広報担当者は、バズフィードに対して次のように述べている。
「我々は、安全面の課題を解決しながら、旅行客の利便性向上に努めている。空港や航空会社と提携することで、信頼性が高く、迅速に動くスタンドアローンなシステムを提供することができる」
イノベーションと利便性向上は、多くの場合安全性を犠牲に達成されることが多く、今回はその典型的な事例になる可能性がある。本来、税関・国境警備局は生体認証システムの導入に先立って国民の意見を聴取する必要があるが、バズフィードが入手した資料によると、今回は行われていないという。
誤って「犯罪者」と判定される可能性も
ここで問題となるのは、まず、顔認証技術の精度に課題があり、大量の旅行客を対象に使用する水準に達していない可能性だ。One Identity でディレクターを務めるPatrick Hunterによると、顔認証システムは誤検出が多く、「乗客が誤って犯罪者だと特定されてしまうリスクがある」と指摘する。
プライバシー保護も大きな問題だ。先月、中国で顔認証システムを手掛ける企業のデータベースから、250万人分のデータが漏洩したことが明らかになった。「提携企業が国際法を犯していないか、誰が確認するのか。生体認証のデータベースは、ユーザーネームやパスワードよりはるかに貴重な情報を含んでおり、洗練されたなりすまし犯罪に使われかねない」とHunterは話す。