名門国立小のカリスマ先生に聞く。「なんでこれがわからないの?」でイラっときた時の教え方

筑波大学付属小学校副校長の田中博史氏

名門筑波大学付属小学校副校長、田中博史氏。「自ら考え、自ら表現できる子ども」を育てる算数のカリスマ教師として知られる。また、「先生の先生」としても、全国各地はもとより海外でもモデル授業や講演を数多くこなす。

メディアでの活躍も幅広く、NHK教育テレビ「かんじるさんすう1、2、3!」、NHK総合テレビ「課外授業ようこそ先輩」などに出演。また、近年では「先生のための夏休み充電スペシャル」と題し、山口智充氏、中川家礼二氏、友近氏といったお笑い芸人とのトークイベントを毎年開催している。

ビジネス誌などでの連載がビジネスマンにも人気の田中氏に、家庭でイライラせずに算数を教えるための極意と、部下を育てるコミュニケーションの秘訣について聞いた。



● 問題:「底辺20センチ、高さが12センチの直角二等辺三角形の面積は?」

まずは田中先生から、こういう出題があった。

「外資系の某会社入社試験で、過去、こういう問題があったそうです。

『底辺が20センチ、高さが12センチの下の図のような直角三角形の面積を求めよ』
 


どう答えますか? ……回答は、後で」

例示の力は偉大。「わからない」の具体例をあげられればしめたもの

家庭学習のコツは、子どもに「もうないの?」「もう一回やろうよ」と言わせること、と田中先生は言う。究極は、「家の人と勉強するのが楽しい」と思わせることができれば、勉強は彼らのものになる、と。

「『これ、あと何回やったら終わり?』と聞いてるうちは、勉強は、誰かからの命令でしかありません。大人が要望を出しすぎて、子どもを満腹にさせているんです。大人からの要望や命令がない自由な状況で、自分で問題の中に問題を発見できたら、子どもは勉強することを喜ぶようになる。

たとえば、拙著『子どもに教えるときにほんとうに大切なこと』(キノブックス刊)にも書いた、『上からふたけたの概数』の話があります。

私が『次の数を上から2けたの概数にしなさい 』という問題を出した時のこと。
 


1以下の少数の場合、1の位の『0」は『2けた」のうちに入れませんが、そのことで、ある子が悩んでいました。

だって、問題が3.247だったら正解は『3.2』、でも、0.247だと正解は『0.25』になる。

『では、3.0247のような時はどうするの?』というのです。この時も『0』を入れないの? と。

この子のように、『何がわからないかがわからない』ではなく、『わからない具体例』『例示』をあげられればしめたものです。例示の力は実はすごい。わからない具体例をあげられるだけで、たとえば答えがわからなくても、偉大な前進なんです。

実は算数・数学で大切にしたい考え方の中に、『物事を場合分けして考える』という力があります。この子は、それを自然にやっていたんですね。

子どもとのこういうやりとりを、大事だと思うか、『いいからさっさと答えを出しなさい』と言ってシャッターを下ろしてしまうか。子どもとの付き合い方では、そこが一番肝心です」
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