名門国立小のカリスマ先生に聞く。「なんでこれがわからないの?」でイラっときた時の教え方

筑波大学付属小学校副校長の田中博史氏


ガンコな部下にはアドバイスする。自分がないタイプには「とりあえずやらせる」

家庭や職場でも、相手のタイプや状況に合わせてコミュニケーションの方法を変えることは重要な気がするのだが、どうなのだろう。

「子どもの表情に合わせて、次に何をしゃべるか考える練習が必要なのは、家庭学習での親も同じです。さらに言えば、ビジネスでも同じだと思います。

一つ、意外な秘技をお教えしましょう。家で職場で、子供や部下にフィードバックする時、思っていることを表情に出さない。ポーカーフェイスを心がけてみてください。

少なくとも、『ここはどうして足したの?』と聞いた途端、子どもが書いた答えを消すのを見たら、あ、表情に出してはいけないんだな、と気づいてアクションを修正する。そうでないと、消して引き算に書き直して正解を出せたとしても、その子の本質的な学びにはつながらないんです。

部下と接する時も、上司に合わせて自分の『色』を出さなくなるタイプの部下の場合、あえて途中で彼らのアクションを修正するような声かけはしない、あくまでも表情に出さず、中立を心がけて「まずは顔色をうかがわせず、自分なりの考えで進めさせる」ことも重要でしょう。

逆に自分の『軸』があって、基本的に自分で決めてやれるような部下の場合は、早いタイミングでアドバイスしても一向に構わないと思います。

指導者側のやり方は一通りではない。人の性格や個性によって付き合い方を変えないと、ポテンシャルを引き出せないんです」



完成までの途上に、「修正を加えればすごいものに結実する」可能性がいっぱい転がっている

文章題が苦手な子どもほど、文章を読まないですぐ計算を始める、というのはよく指摘されることだ。文章題を家庭で教えるには、どうしたらよいのだろう。

たとえば計算問題では、答えの出し方は基本的に一通り。選択肢があるにしても、筆算か暗算かくらいで、とにかく解法に自由度はない。

田中氏によると、しかし、文章題には答えに至るまでの「過程」に可能性がゴロゴロしている、という。

「いつもは、文章題を読む→式を立てる→◯をもらう、の繰り返しですよね。パターン化したサイクルには、ドキッとして立ちどまるチャンスがない。考えさせるには、時には『いつもと違う方法』、つまり答えが一意に決まらないような問題を試してみます。

「たとえば、私が子どもによく出すのは、『ミルク味、いちご味、レモン味のアメ玉を、お友だちと2人で分けるにはどうしたらいいか』の問題。

1回、すごいなと思ったことがあります。『じゃんけんして、勝った子は好きなものを1個だけ取れる。負けた子は2個もらえるようにする』というんです。質と量でそれぞれ平等をつくるというのが、賢い駆け引きだなあと思いました(笑)。
次ページ > 高学年はさらに高度に

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事