ビジネス

2019.03.20

テスラの「オンライン販売戦略」に全米メディアが大反発

テスラ CEO イーロン・マスク(Photo by Robyn Beck-Pool/Getty Images)


これを回避するには破産を申請するなどしかなく、テスラがこの巨額のペナルティから逃れられるのは非現実的だ、とWSJは見ている。そして、先月契約を結んだばかりのサンタモニカのモールにある店は、テスラの強気の交渉があっても6年リースだった、と皮肉を込めて付け加えている。

この報道の直後、テスラは店舗閉鎖と解雇を今月末まで凍結すると発表した。しかし、すでに閉鎖の第一波は始まっているし、ふつう解雇通告を受けた従業員は翌日からネットなどに履歴書をアップロードし、気分は100%仕事探しモードのはずだ。

また、エレクトレックによれば、テスラが複数店舗で試乗の予約を取らなくなったことを確認しているし、試乗を通じてセールスコミッションを得るセールスマンたちにとっては実上の賃金カットだ、と報じている。

その後、フィナンシャル・タイムズ紙などは、凍結でなく「Uターン」だと報じ、テスラは店舗閉鎖そのものをやめたと伝えている。一方、フォーチュン誌は、店舗閉鎖は続けるが、閉鎖する数を減らしたと書いている。そして、いずれもテスラの車体価格の値上げの意向を伝えており、それは閉鎖できないなら高く売るまでと開き直っている姿勢にも見える。

「前科」のあるマスクだけに…

イーロン・マスクは、2兆円の個人資産をもつシリコンバレーの巨人で、宇宙開発会社のスペースX社の創業者でもあり、経済界の話題をなにかと独占してきた人物でもある。と同時に、ソーシャルメディア上で不当な中傷や差別発言を発信し、自社の株価を急落させた「前科」もある。

テスラが、アメリカでもっとも注目を浴びる自動車メーカーのひとつであることは間違いないが、すでに多くの社員を拙速に解雇し、今後職場がどうなるのかと社員を迷わせ、人事発令よりもCEOのツイートが先走り、販売戦略はダッチロールが繰り返される現況は、今後の同社製品へのファン心理に大きな影響を及ぼしそうだ。

連載 : ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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