シネマの女は最後に微笑む


ようやくそれに気づいた良香が盛大に逆ギレし、二に突然の別れを告げ、突飛な理由をでっちあげて会社を衝動的に辞めてしまう下りは、彼女にとっては第二の破壊だろう。

イチと自分の距離を突きつけられ幻想が失われたのは第一の破壊だが、それは良香にとってあくまで受け身の出来事であり、耐えられず二の方に逃避したことで問題は先延ばしにされた。

だから今度は自ら爆発し、その自爆をもってすべてをリセットする必要があったのだ。適当な受け皿に使われたあげくに吹き飛ばされた二が、意外といい奴なのが却って悲しい。

なりふり構わず愛を訴えていた二に対する良香の態度は、思えば酷いものだった。希望を持たせては撥ね付け、またなんとなく寄ってくる情緒不安定な彼女に、二は散々振り回されたかたちだ。しかし、ベクトルはまったく異なるがコミュニケーションに若干問題のあるこの二人は、ある意味では似た者同士と言えたかもしれない。

体裁を捨てて剥き出しになった、みっともなくも正直な言葉の応酬の果てに、良香がふと二のこめかみに指で渦を描く仕草をするのは、彼が自分と同様の「アンモナイトの化石」であることに気づいたからではないだろうか。

目の前にいる他者は、決して理想の相手ではない。それでも、ぶつかってみる価値はあるかもしれない。

連載 : シネマの女は最後に微笑む
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文=大野左紀子

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