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シネマの女は最後に微笑む


脳内会話は得意だが現実ではすぐフリーズする良香と、言わなくていいことまで喋る二。相手の気持ちが読めない良香と、独りよがりの空振りを続ける二。

酔った二から「つきあって下さい」と言われて、「初めてコクられた!」と一瞬テンションは上がるものの、やたら元気のいい相手を見ていると気分は今ひとつ盛り上がらない。

ことあるごとにイチを「召喚」して目の前の二から目を逸らせる良香は、脳内の恋人と現実の恋人を二股することで、中途半端な状態に甘んじている。そこから決断して一歩踏み出すのは、やったことがないので怖いのだ。

ファンタジーが破壊され…

しかしアパートでボヤ騒ぎを起こしたことをきっかけに、良香は「死ぬ前に一度でいいからイチに会いたい」と思い定め、留学中の同級生を騙って同窓会を企画。そこで、イチを含めた上京組だけで会うチャンスを得、有頂天になる。

この同窓会でもパーティでも、場に馴染めず誰とも喋れず、何かをすれば浮いてしまい、結局あたかもそこにいないかのように扱われる良香のたたずまいは、似たような経験のある者なら見ていてどうにもいたたまれないだろう。

深夜になってからようやくのことで、イチとベランダに二人きりになった彼女は、なぜか絶滅動物の話で盛り上がり喜びがピークに達するが、信じられない事実に打ちのめされる。

コツコツと、だが相当自分勝手に作り上げてきたファンタジーが一瞬で破壊され、初めて現実と向き合う良香。

妄想世界とは異なり、現実には、自分の話にポジティブな反応を返してくれるカフェのウエイトレスやバスの隣席のおばさん、コンビニ店員や釣りのおじさんはいない。前半で描かれた、まるで自分が世界の中心にいるようなシーンが、彼女のファンタジーの映像化に過ぎなかったことを見せるこの切り返しは、残酷にして鮮やかだ。

誰も自分など見ていなかったことを思い知らされた良香が一人で号泣するシーンは、あまりに惨めで痛々しい。

心の拠り所を失ったショックから立ち直ろうと、二とのデートを重ねる良香だが、なんとなくコミュニケーションの歯車も合ってきた矢先に距離を詰められて逃げてしまう。さらに、来留美が自分のプライベートな情報を二に流していたことを知り激怒。

良香と二がくっつくように工作し、両者の「相談相手」として振る舞う来留美は、おそらく無意識のうちに一段高い目線で、人をコントロールの対象として見ているような女性だ。さりげなくマウントをとりながらも「あなたのためを思ってるの」というスタンスを崩さないあたりが、良香の二倍も三倍もうわてである。

文=大野左紀子

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