ビジネス

2019.03.19

サンフランシスコで起業する「再現性」をつくりたい──小林清剛が歩む、起業家「第二の人生」

“キヨさん”と多くの起業家が慕う、小林清剛




──ノボットを売却した後、もう一度起業しようと思った理由は何だったのでしょうか?

前のノボットのときは、自分たちのプロダクトをアジア全体で使われるようにしたかったんですが、どうしてもグーグルに勝てずにいたんです。大企業のアセットを組み合わせればグーグルとも戦えるんじゃないかという思い、KDDIグループに入ったのですが、それでも結果的にはアジア全体を獲れず……。

その体験が個人的にはすごく悔しくて。その目標が達成できないと感じた瞬間から、「今度は絶対に世界中で使われるプロダクトをつくる」と決めていました。

私は昔から、起業家の価値は「自分がいる世の中と、自分がいない世の中の差分」だと思っています。自分たちのプロダクトが、世界中で使われるほど、起業家としての価値は大きくなっていく。だからこそ、サンフランシスコに拠点を置き、この地から世界中で使われるプロダクトを開発することにしました。

また、先ほど話したサンフランシスコでスタートアップする再現性をつくれたら、それも大きな価値になると信じています。事業と個人の両方の面から、世の中に貢献していける起業家でありたいと思っています。

ペルソナはいらない。自分が欲しいと思えるかどうか

──リモートハイヤリングプラットフォーム「Remotus」も手がけられていましたが、現在の事業に行き着いた経緯は何だったのでしょうか?

チョンプを思いついたのは、私自身がスナップチャットというモバイルアプリを使って友達同士で外食したときの写真をやり取りしていたことがきっかけです。私は外食が大好きで、そのコミュニケーションが楽しくて、その体験をもっと良くするためのプロダクトを作ってみたくなりました。また、私同様に、その体験を楽しいと感じてくれる人たちに、世界中で使ってもらえたら、とても面白いと思いました。

サンフランシスコに来てから、何度もプロダクトをつくっては止めました。チョンプも数えきれないほどの試行錯誤を繰り返しています。モバイルアプリが何個も開発できるほど時間をかけて、ユーザー体験を模索しています。

私はプロダクトが面白いかどうかは、課題設定に独自の視点が含まれているかや、課題に気づいた体験がどれだけユニークかが大事だと思っています。プロダクトをつくる初期の段階から、ペルソナを設定する人が多いのですが、私はそのやり方は嫌いです。

新しいプロダクトをつくるなら、自分が欲しいもの、自分が抱えている問題を解決するものがベストですし、または、家族や友人が欲しいもの、彼らが抱えている問題を解決するものがいいです。自分のためや身近な人に喜んでもらえるものじゃないと、困難な課題が降りかかってきた際に心が折れてしまうし、途中で何のために必死に頑張ってるのか分からなくなってしまいます。



──最近はAIやブロックチェーンなどのトレンドを軸にしたサービスを展開する起業家も増えているような印象があります。

サンフランシスコ、シリコンバレーのトレンド、特にテクノロジーに関するトレンドは、基本的に5年から10年前くらいからベンチャーキャピタル(VC)が仕込んでいます。投資家やテックメディアが、あるトレンドについて言及し始めてたあとに、その波に乗ったところで、既に遅いです。もちろん、例外もありますが、多くの場合は、そのトレンドの後追いになってしまう。

だから、トレンドありきでプロダクトを考えるのではなく、トレンドを利用して、今までは実現しなかった自分や身近な人が欲しいもの、彼らの課題を解決するものに取り組んだほうがいいと思います。

──最後に今後の展望を教えてください。

チョンプは、今の段階では、ユーザー数やダウンロード数を追うのではなく、とにかくユーザー体験を良くすることだけを毎日考えています。自分たちが友達と使いながら、また、友達にその友達と使ってもらいながら、どうやったら自分たちが届けたい最高のユーザー体験を実現できるかを、色々と試しています。グロースする段階になったら、米国だけではなく、世界中の人たちに使ってもらえるように、一気に拡大する予定です。

チームのメンバーもチョンプを自分たちで利用して、ユーザーの目線からもどうやったらプロダクトを良くできるかを真剣に考えています。何度も一緒にプロダクトをつくりたいと思える最高のメンバーが揃っているので、チョンプは良いプロダクトになると確信しています。

文=新國翔大 写真=小田駿一

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