「フランスの真珠」という異名を持つコートダジュールの保養地の中で、人口3万人ほどの小さな町ですが、バカンス期になると多くの観光客で賑わいます。また、ニースのカーニヴァルと同様、冬の閑散期の2〜3月にはレモン祭りが開催され、世界中から人々が集まります。
なぜレモンが有名なのかというと、それは環境によるもので、アルプスの山脈によって強風や北風から守られながら、太陽の日差しをたくさん浴びて育つから。風通しがよく湿気が滞在しないのか、ビオ(農薬に頼らない方法)で栽培しても病気になりづらいです。
マントンのレモンは、普通のレモンよりも鮮やかな黄色をしており、サイズも通常よりも大きくごろっとした形をしています。渋皮が非常に厚く、それに包まれた実は普通のレモンほど酸っぱくなく、渋皮自体も渋くありません。そして、清涼感溢れる香りが、心を安らかにさせてくれます。
このマントンのレモンで作るタルトは絶品。酸味の優しいレモンクリームと、しっかり焼けた生地の風味や甘味のバランスが素晴らしく、冬から春にかけて食べたくなるものの一つです。
ちなみに、フランスは各地方に地産のフルーツや木ノ実を使ったタルトがあります。ノルマンディーはりんご、ロレーヌ地方はミラベル(西洋すもも)、アルザス地方は洋梨、グルノーブルはクルミ、僕の住むニースはブレット(不断草)。フランスの地方を訪ねた際には、こうした土地土地の気候風土を表す名物タルトをぜひ食べてみていただきたいです。
さて、レモンの話に戻ります。レモンといえば、ビタミンC。化粧品に配合されたり、手軽なサプリメントも充実し、美容にいいイメージのあるこの成分ですが、メラニン色素の生成を抑えたり日焼けを防いだりという以外にも、免疫機能を高めたり、カルシウムや鉄分の吸収を高めてくれたりと、多様な働きをします。また、レモンは抗酸化作用の高いクエン酸を多く含むため、アンチエイジングや生活習慣病の予防の面でも役立つ、高齢者の味方でもあります。
そのレモンが豊富なマントンは、実は第3世代エリアと言われ、「ヨーロッパ中の高齢者の老人ホーム」とも呼べるような場所。南仏の太陽に憧れて、人生の終着地点としてこの町にやってくる人が多く、意外とグローバルな町でもあるのですが、健康の味方であるレモンが豊富なマントンに高齢者が集まるというのは、不思議というか、面白い関係だなと思います。